研究について

研究成果

軽石の覆砂材としての利用に関する実験的研究

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 62-2-2 2023年06月
執筆者 井上 徹教、藤田 勇
所属 海洋環境制御システム研究領域 海洋汚染防除研究グループ
要旨

 本稿は”Water”で出版された論文”Application of drifted pumice stone as a sand-capping material”を日本語訳したものに加筆したものである。
 2021 年8 月13 日の小笠原諸島の福徳岡ノ場における海底火山の噴火により発生した大量の軽石は 各地の海岸に漂着し,船舶の航行や漁業等に影響を与え,漂着した軽石の処分も問題となっている. 本稿では,軽石の有効利用の一つとして,富栄養化した堆積物への覆砂材としての利用の可否につい て室内実験により検討した.
  破砕した軽石を覆砂材として利用した場合,堆積物による酸素消費速度を低減させる効果が得られ ることが確認された.この傾向は覆砂材中の軽石の割合が多いほど顕著であり,軽石のみを覆砂した 場合,堆積物による酸素消費速度は最大で61%の低減が見られた.栄養塩溶出についても同様の傾向 がみられ,NH4-N 溶出速度は最大で25%の低減、PO4-P 溶出速度は最大で82%の低減が見られた. このNH4-N とPO4-P の差は,PO4-P は軽石に顕著に吸着するのに対し,NH4-N はほとんど吸着が認め られないことによるものと考えられた.また,粉砕した軽石を懸濁させた海水中でのアサリの培養実 験の結果から,軽石に特有の悪影響は認められず,同濃度のカオリンよりも死亡率は低い結果となっ た.この違いは,懸濁粒子の粒径の違いによる鰓への付着および閉塞状況の違いによるものであると 推察された.
  以上から,粉砕の作業が必要となるものの,軽石は覆砂材として有効な材料であり,堆積物の酸素 消費や栄養塩抑制を期待できるとの知見が得られた.

キーワード:軽石、覆砂、酸素消費、栄養塩溶出、生物影響

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