研究について

研究成果

フィルターと分析者の違いが沿岸域における魚類の環境DNA 網羅的解析の結果にどう影響するか?

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 No1406 2023年03月
執筆者 細川 真也、小室 隆、大倉 翔太、和泉 隆夫
所属 海洋環境制御システム研究領域 海洋環境情報研究グループ
要旨

 環境DNA に基づく網羅的解析は,魚類調査の低労力化・低コスト化が期待される.しかし,沿岸域における環境DNA の空間分布は複雑で,かつ,分析を阻害する要因も存在することから,実用化までには課題がある.本研究では,網羅的解析の要素技術のうち,フィルターと網羅的解析の分析に着目し,これらの違いが網羅的解析の結果に与える影響について,主要な魚種を取りこぼすことなく検出できるか,確かな種数の検出ができるか,特定の魚種の検出に差はないか,の3つの視点で検証した.この結果,以下の結論を得た.1) 主要な種の検出においては,本研究で比較したフィルターの間では差はなく,分析者が違っても差はない.2) 検出される種数は,孔径が小さなフィルターほど多い.一方,分析者が違えば,検出される種数に影響する可能性はあるものの,重大な差を引き起すかどうかわからない.3) 環境DNA の起源が多様な沿岸域では,フィルターの孔径の違いで,捕捉する種を生活様式別に選別できる可能性がある.これらの結論は,網羅的解析を使う目的に応じて,フィルターを正しく選択する必要があることを示しているが,これらの結論から,分析者を指定する明確な根拠は得られなかった.
キーワード: 環境DNA, MiFish プライマー, 推定精度, 種の豊富さ, 種組成

全文 TECHNICAL NOTE1406(PDF/1,435KB)