研究について

研究成果

地盤及び水理外力の特性を考慮した吸い出し・空洞形成・陥没機構とフィルター材による抑止法の研究

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 59-3-1 2020年12月
執筆者 工代 健太・佐々 真志・梁 順普・高田 康平・鈴木 高二朗
所属 地盤研究領域 動土質研究グループ
要旨

 港湾施設における吸い出し抑止対策に資することを目的に、様々な地盤及び水理外力下における吸い出し・空洞形成・陥没の一連の進行過程について実大スケールの大型吸い出し可視化実験により検討した。粒径が細かくサクションが相対的に高い地盤では幅広の空洞が形成され、陥没範囲が広くなるなど、裏埋砂の粒度によって異なるサクションの高さが空洞の形状及び陥没の範囲に影響することを示した。また、水位変動の繰り返し作用による吸い出しの進行過程に水理外力の作用方向が大きく影響することを示した。さらに、水位上昇に伴う地盤内のサクションの低下が空洞の陥没において本質的な役割を果たしていることを明らかにした。
 吸い出しによる空洞陥没を地表面の変位観測により予知する手法の検討を目的に、地盤内の空洞の位置及び規模と地表面変位の大きさ及び範囲の関係性を明らかにした。すなわち、サクションが異なる裏埋砂ごとに、空洞の最大幅と深さの比(B/L)と地表面変位の最大値(dmax)の間には、地盤高や水位変動幅によらず密接な相関関係があることを示した。
 二層構造のフィルター材による吸い出し抑止法についての系統的な検討を行い、一連の要素試験と大型可視化実験の結果を基にフィルター材の適切な粒度条件について明らかにした。具体的には、均等係数が3.0以上のフィルター材を中央粒径比(フィルター材の中央粒径DF50 / 砂の中央粒径 DS50)20以下で設置した場合、裏埋砂の粒度に拘わらず吸い出しを十分に抑止しうることを示した。また本研究結果に基づき、吸い出し抑止のためのフィルター材の設計指針を提示した。

キーワード:吸い出し、空洞、陥没、サクション、フィルター材、均等係数

全文 REPORT59-3-1(PDF/4,746KB)