研究について

研究成果

河口沿岸域の地形変化予測に適用可能な砂泥混合輸送モデルの開発

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1376 2020年09月
執筆者 小硲 大地、中川 康之
所属 沿岸環境研究領域 沿岸土砂管理研究グループ
要旨

 河口沿岸域における土砂動態および地形変化の予測を適切に行うことは、生態系保全および周辺港湾の維持管理の観点から極めて重要な課題である。河口沿岸域の底質は、非粘着性土砂(砂)と粘着性土砂(泥)の混合粒径土砂で構成されることが多い。砂泥混合底質の侵食特性は底質中の含泥率に依存して変化することが報告されており、河口沿岸域の地形変化予測においても、砂泥混合底質の特徴を踏まえた土砂輸送現象のモデル化が重要となる。本研究では、河口沿岸域の地形変化予測に適用可能な土砂輸送モデルを開発することを目的として、砂泥混合底質の侵食特性および砂泥の侵食・堆積に伴う含泥率変化を考慮した砂泥混合輸送モデルを構築した。次いで、国内現地土砂で構成される砂泥混合底質の移動実験を実施し、モデルパラメータの最適化をふまえた底質移動量の推定結果に対する精度検証を行った。さらに、本モデルの現地適用に向けた基礎的な検討として、有明海東部海域(熊本港周辺)を対象とした土砂輸送シミュレーションを実施した。
 国内現地土砂で構成される砂泥混合底質の移動限界および移動量の評価実験により、低含泥率域(29.6 %未満)において限界底面せん断応力が増加し、底質移動量(侵食量)が著しく減少することが確認された。実験の再現計算を通じて、含泥率に依存した底質の侵食特性を考慮した本モデルは、移動限界の評価実験に基づき限界底面せん断応力のパラメータ調整を適切に行うことで、移動量の評価実験で示された含泥率に依存した底質移動量の外力応答特性を良好に再現できることが確認された。実海域を対象とした計算を通じて、本モデルにおける外力や含泥率の空間分布に依存した砂泥それぞれの輸送や地形変化、含泥率変化の特徴を確認した。

キーワード:土砂輸送モデル、砂泥混合底質、底質移動実験、含泥率、限界底面せん断応力

全文 TECHNICALNOTE1376(PDF/5,804KB)