研究について

研究成果

多峰型方向スペクトルからの風波・うねり成分抽出に関する高精細化手法の提案

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 59-2-4 2020年09月
執筆者 藤木 峻、川口 浩二
所属 海洋情報・津波研究領域 海象情報研究グループ
要旨

 風波とうねりが共存するような複雑な海象条件下では、方向スペクトルが多峰型を示す場合がある。しかし、多峰型方向スペクトルに関しては、解析手法の技術的課題から十分な調査研究はなされていない。そこで本研究では、多峰型方向スペクトルにおける風波・うねり成分の高精度な観測に資することを目的として、方向スペクトル解析手法の高精細化を行った。まず、既存の手法を基に方向スペクトルをより高精度に推定する手法を、次いで多峰型方向スペクトル上の波浪成分を合理的に特定するためのSpectral partitioning手法を提案した。うねりの方向スペクトル推定および多峰型方向スペクトルの解析を想定した数値実験により、提案手法の有効性を確認した。
  提案手法を用いて現地観測データの解析を行い、多峰型方向スペクトルから各波浪成分を特定し、その波高・周期・波向の抽出を行った。風波とうねりの分離の基準として波齢を用いて各波浪成分を風波またはうねりと判定することで、風波・うねりそれぞれに相当する波浪外力の評価が可能となった。また、波形勾配と方向集中度の関係の解析において、多峰性の有無を区別することで観測データの解釈が容易となることを示した。本研究で高度化した解析手法は、解析者の経験や試行錯誤に依存する閾値の設定を要しないため、波浪観測の現業運用への導入が容易であると期待される。

キーワード:非負制約最小二乗法、方向スペクトル推定、情報量規準、Spectral partitioning、風波、うねり

全文 REPORT59-2-4(PDF/13,824KB)