研究について

研究成果

環境DNA による沿岸域魚類の網羅的な推定と多様性評価

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1373 2020年06月
執筆者 細川 真也・百田 恭輔・大倉 翔太・小室 隆
所属 海洋情報・津波研究領域 海洋環境情報研究グループ
要旨

 環境中に漂うDNA の検出によって生物の生息域を推定する技術(以下、 環境DNA 分析) の開発が進んでいる。 魚類を網羅的に推定する環境DNA 分析は、 実務への応用が期待されるが、 他の海域との相互作用があり、 かつ、 河川や人間活動の影響を強く受ける沿岸域では、 環境DNA 分析によりどこまで生物の生息域の推定に有効なのか未知な点が多い。 本研究では、 種の識別能力と再現性が高く、 魚類を網羅的に推定できるMiFish プライマーセットに着目し、 沿岸域における推定精度の把握と港湾分野における魚類調査への応用の可能性の検証を行った。
 沿岸域における推定精度の把握では、 直接的な方法との比較による推定能力を評価し、 さらに、 注意点の抽出を行った。 この結果、 環境DNA 分析は高い精度で魚類の分布を推定できるものの、 分析者による検出力及び同定精度に差があることと河川や人間活動に由来した環境DNA を検出してしまう等の過剰な推定があることが注意点として挙げられた。 魚類調査への応用に関して、 環境DNA 分析によって推定された結果から種数と種組成の比較が可能かどうか検証した結果、 抽出された注意点がこれらの比較に影響するものの、 その影響は回避できることが示された。 また、 種数と種組成の比較に必要となる空間距離とサンプル数についても検証し た。 本研究で整理された知見は、 環境DNA 分析技術を用いた港湾分野の魚類調査計画の立案や解析手法の選択に貢献するものと考えられる。


キーワード: 環境DNA、 MiFish プライマー、 推定精度、 種の豊富さ、 種組成

全文 TECHNICALNOTE1373(PDF/1,431KB)