研究について

研究成果

開端杭の引抜き抵抗力に及ぼす施工過程と杭形状の影響に関する模型実験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1364 2019年11月
執筆者 中村圭太・元水佑介・松村聡・水谷崇亮・新谷聡・大下英治・末政直晃
所属 地盤研究領域 基礎工研究グループ
要旨

 これまで、港湾施設の杭基礎について、技術基準には引抜き抵抗の設計法や安全率等が記述されているものの、構造物の急激な破壊が懸念されることから、引抜き抵抗をあまり期待しない設計をしてきた。実験により杭の引抜き抵抗特性を調べる際は模型実験が有効であるが、大掛かりな実験となることから、杭の引抜き抵抗力に着目した実験データは少ないのが現状である。そこで本研究では、幅6m、奥行き3m、深さ3mの大型土槽と、杭径150mm、杭長3000mmの杭を用いて杭の引抜き模型実験を行った。
  実験では、杭の引抜き抵抗力に及ぼす施工過程(地盤への貫入過程)と杭の形状の影響に着目した。施工過程では、杭の貫入時の地盤の乱れに起因して杭の引抜き抵抗特性が変化することから、(1)地盤作製前に事前に建込むことで周辺地盤を乱さない杭と(2)実際に杭を地盤に施工する杭の2種類を用意し、(2)についてはさらに静的押込みと衝撃打込みの2つの貫入方法で実験を行なった。また、杭の形状については通常用いられるストレート杭に加えて、杭先端付近が細いテーパー形状の杭を用意した。両杭の支持力特性の違いを検証するために、引抜き試験のほか、押込み試験と水平載荷試験についても実施した。
  実験の結果、杭の引抜き抵抗力はその施工過程の有無で大きく異なり、地盤作製前に建込みを行なった杭は、実際に地盤に貫入した杭に比べて引抜き抵抗力が過小評価されることがわかった。ストレート、テーパー杭の挙動については、特にその貫入過程において違いが見られた。従来多くの検討がなされてきたように、ストレート杭では杭の先端が詰まる先端閉塞現象の発現と破壊が交互に生じる様子が観測されたが、テーパー杭についてはそのような挙動は見られなかった。そこで、先端閉塞が全く生じず、杭内に侵入した土が圧縮も膨張もしないという仮定のもと、テーパー杭の杭内地盤高さに関する解析を行ったところ、解析結果は実験結果によく一致し、テーパー杭は先端閉塞現象が生じにくいことがわかった。

キーワード:引抜き抵抗力、支持力、テーパー杭、施工実験、載荷試験、大型模型実験

全文 TECHNICALNOTE1364(PDF/10,411KB)