研究について

研究成果

第三世代波浪モデルによるうねり性波浪の推算精度検証

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1358 2019年08月
執筆者 田村仁、川口浩二、藤木峻、末廣文一
所属 海洋情報・津波研究領域 海象情報研究グループ
要旨

 波浪情報は港湾構造物の設計や事業実施計画において第一義的に重要となる。日本沿岸の波浪観測網であるナウファスは沿岸域の開発・利用・防災に幅広く活用されてきている。しかしながら観測地点が設定されていない海域や、設置海域内であっても海象場の局所性が大きくその海域を代表できない場合、数値波浪モデルによる波浪推算が必要となる。既存の第三世代波浪モデルでは特にうねり性波浪の再現精度に関して問題があることが指摘されており、その原因解明とモデル改良は海岸工学における重要研究課題の一つである。本研究では第三世代波浪モデルを用いて2つのハインドキャスト実験を行うことでその推算精度検証とスペクトルモデルの適用限界に関して議論を行った。実験1では日本沿岸を対象とした3年間の波浪計算を行い、第三世代波浪モデルの力学過程(エネルギーソース関数)に起因する計算精度に関して解析を行った。実験2では、富山湾の寄り回り波を対象としてモデルの解像度に対する計算結果の違いを示した。その結果、力学過程に起因する計算結果の差異はそれほど顕著ではなく、有義波高といったバルク統計量はほぼ同様の結果を示した。またいずれのモデルも寄り回り波事例の波高を再現することができなかった。一方で、異なる方向解像度を設定した計算結果からは、特にうねりの伝搬にともなうスペクトル形(方向分散度)が大きく異なることが示された。寄り回り波発生時の入射波スペクトル方向分散度はSmaxで560程度にもなる狭帯スペクトルであり、準単色波列の位相干渉による振幅変調が寄り回り波と関連していることを示唆した。

キーワード:第三世代波浪モデル、うねり性波浪、ハインドキャスト、富山湾・寄り回り波

全文 TECHNICALNOTE1358(PDF/3,671KB)