研究について

研究成果

鹿島灘におけるチョウセンハマグリの生残に関する物理環境

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1355 2019年08月
執筆者 柳嶋慎一、中村聡志、伴野雅之、山崎幸夫、半澤浩美、宇田川徹、杉松宏一、南部亮元、澤田英樹、武若聡
所属 沿岸環境研究領域 沿岸土砂管理研究グループ
要旨

 チョウセンハマグリ(Meretrix lamarckii)は、太平洋に面した鹿島灘海岸における重要な水産資源である。チョウセンハマグリの生き残りにおいて、産卵、浅海域における浮遊幼生の沈着、稚貝の汀線移行、成貝の沖合移行が重要と考えられる。本資料は、鹿島灘海岸にある波崎海洋研究施設他で1987年から2016年までに観測された物理環境(波、流れ、水温、地形変化、底質粒径)と、産卵、浮遊幼生、沈着、汀線移行、沖合移行のチョウセンハマグリの生活史を考慮した生残との関係を検討した。
 チョウセンハマグリの産卵には最適水温があり、30年平均水温に比べ平均1℃以上高くならない方が良く、沿岸湧昇による水温の低下が平均-1~-2.3℃の範囲が最適水温と考えられる。沿岸湧昇による水温低下後の急激な水温上昇をきっかけに、チョウセンハマグリは産卵していると考えられる。チョウセンハマグリの浮遊幼生が沈着するための条件の一つは、浮遊幼生が鹿島灘海域外に運ばれない事であり、そのためには、一方向の沿岸流が長く続かない事が必要である。浮遊幼生は、内部波によって沖向きに運ばれるので内部波は発生しない事が望ましいと考えられる。汀線付近で観察された稚貝の数と底質の岸向き移動を表すパラメータを比較することによって、稚貝の汀線への移動の重要性が確認された。チョウセンハマグリ幼・成貝は、沖のバーの沖向き移動に伴って主たる棲息水深である6m付近に移動すると考えられる。

キーワード:鹿島灘、チョウセンハマグリ、生残、産卵、浮遊幼生、稚貝、水温、沿岸湧昇、沿岸流、内部波、地形変化、バー

全文 TECHNICALNOTE1355(PDF/4,341KB)