研究について

研究成果

三次元流体場での係留船舶動揺解析手法の開発

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 58-1-1 2019年08月
執筆者 相田康洋、平山克也
所属 海洋研究領域 波浪研究グループ
要旨 従来の港湾における係留船舶の動揺解析では、船舶に作用する流体力は周波数応答関数として扱われ、防舷材や係留索の非線形外力を考慮したのちに時間発展的に解かれる。その際、一般的には線形な一方向不規則波中の船舶の応答が解かれ、船型の断面形状は船舶諸元を満足するような関数によって近似される。一方で、三次元流体場解析により船舶に作用する流体力を直接算定する手法は、非線形性の強い波浪場を再現可能であり、しかも船舶の形状を関数で近似する必要がないものの、その適用事例の多くが断面二次元や一方向波中での検討に留まっている。しかし、例えば、沖合に防波堤を持たない外洋に面した離島港湾の岸壁では、係留船舶の動揺量を求めるために、非線形性の卓越する多方向不規則波浪場を取り扱う必要がある。 そこで、CADMAS-SURF/3Dの機能を拡張する形で、非線形性の卓越する多方向不規則波の造波と任意形状の係留船舶の動揺解析を実現し、三次元流体場での浮体動揺解析手法を新たに開発した。 本稿では、まず、NOWT-PARI及びCADMAS-SURF/3Dでそれぞれ計算された同地点における時系列波形、波浪統計量、方向スペクトルを比較することにより、実務上十分な精度でCADMAS-SURF/3Dにおいて多方向不規則波の造波を実現できることを示した。次に、浮体の運動を取り扱えるようCADMAS-SURF/3Dを拡張し、一方向不規則波中および多方向不規則波中での係留船舶の動揺量・係留索張力を算定した。また、これらの計算結果を実験結果と比較してそれらの妥当性を検証することにより、開発した拡張CADMAS-SURF/3Dを任意の波浪場および船舶形状に適用できる新たな係留船舶動揺解析モデルとして提案した。さらに、多方向不規則波が作用する実際の離島岸壁に係留された中・小型船舶の動揺特性を解析的に示し、実務レベルで適用できる汎用性の高い計算モデルであることを示した。 キーワード:係留船舶動揺、多方向不規則波、CADMAS-SURF/3D、ブシネスクモデル、単一成分波理論、港内静穏度
全文 REPORT58-1-1(PDF/5,670KB)