研究について

研究成果

Swell Indexによるうねり性波浪の定量化と日本沿岸波浪場解析

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 57-4-2 2019年03月
執筆者 田村仁、藤木峻、川口浩二
所属 海洋情報・津波研究領域 海象情報研究グループ
要旨

 富山湾の寄り回り波に代表されるように設計波で想定している以上の周期を有するうねりの襲来およびそれに伴う沿岸被害が近年多発しており、うねり性波浪の予測と監視は海岸工学分野における重要研究課題の1つとなっている。うねりの発生は大気擾乱に起因する。つまり、成分波間の非線形相互作用によるピーク周波数のダウンシフティングにより、低周波成分の風波エネルギーが生成され、それらが生成海域を離れうねりとして遠方まで伝搬する。実海域でのうねりの発生や伝搬といった力学過程を理解するには、まず風波とうねりをスペクトル空間内で定量的に分離することが重要なポイントとなる。しかしながら実務等で一般的に用いられる波形勾配を指標とする分離手法では、ある海象場がうねりかそうでないかの識別として用いられ「うねり性」の計量化には適用できない。
  本研究では海洋波の成長率に着目することで風波とうねりをスペクトル空間内で分離し、それに基づいて全波浪エネルギーに対するうねりエネルギーの比としてSwell Index(SI)を導入した。データ解析にはNOWPHAS (Nationwide Ocean Wave information network for Ports and HArbourS)による2007年から2016年までの波浪観測値を用いた。その結果、SIを用いることで風波とうねりを明確に分離することができ、富山湾における波浪特性に関して物理的な解釈が可能となった。また、日本沿岸のうねり性波浪の海域特性とその季節変動を解釈することが可能となった。日本沿岸では概ね3つの海域(1。日本海沿岸:北陸から中国地方、2。太平洋沿岸:東北地方、3。太平洋沿岸:四国から九州地方)でうねりによる高波が高頻度に発生し、それらが日本近海の大気擾乱と関連していることが示唆された。

キーワード:うねり性波浪、Swell Index、NOWPHAS、寄り回り波、日本沿岸うねり特性、

全文 REPORT57-4-2(PDF/1,960KB)