研究について

研究成果

統計的手法を用いた桟橋上部工の塩害による劣化傾向分析

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1349 2018年12月
執筆者 田中豊、川端雄一郎、加藤絵万
所属 構造研究領域 構造研究グループ
要旨

 桟橋上部工は厳しい塩害環境にさらされているため、塩害による劣化が顕著である。桟橋上部工下面の目視点検は、海上作業であること、点検対象の部材が多いこと、海象条件等による時間制約があること等から、作業にかかる労力が大きい。さらに、塩害による劣化進行は桟橋内だけでなく、部材内でも一様でないことが知られている。桟橋内および部材内における劣化進行の非一様性に影響を及ぼす要因や劣化傾向を把握できれば、重点的に点検すべき箇所や劣化状態を把握するためのセンサーを設置する箇所等を検討することができ、点検の効率化につながると考えられる。そこで本研究では、劣化進行に影響を及ぼす要因および劣化傾向を把握することを目的として、①19施設分の桟橋上部工下面の目視点検データ分析、②2枚の桟橋上部工の床版における塩化物イオン濃度測定およびその平面的な分布推定を行った。
  ①19施設分の桟橋上部工下面の目視点検データ分析より、部材種類ごとに劣化進行に影響を及ぼす要因を把握した。法線平行方向の梁では、海側および陸側に位置する部材の劣化が進行しやすく、法線直交方向の梁では、H.W.L.からの距離が近い環境の場合に全体的に劣化が進行しやすい可能性が示された。また、床版では、陸側に位置する部材の劣化が進行しにくい一方で干満差が小さい環境の場合に全体的に劣化が進行しやすい可能性が示された。
 ②2枚の桟橋上部工の床版における塩化物イオン濃度測定の結果、両床版で塩化物イオン濃度の値が大きく異なり、そのうち1枚の床版では、塩化物イオン濃度の値が大きくばらついていた。塩化物イオン濃度の平面的な分布推定の結果、両床版ともに床版の奥側で塩化物イオン濃度が高く、中央および手前側で塩化物イオン濃度が低い特徴が見られた。
 以上から、本研究の範囲において、桟橋内および部材内で劣化が進行しやすく、重点的に点検すべき箇所として、海側に位置する法線平行方向の梁および床版(特に床版の奥側)、陸側の梁部材(土留部からの距離が近い場合)が挙げられる。

キーワード:桟橋上部工、塩害、劣化傾向、生存時間解析、空間統計学

全文 TECHNICALNOTE1349(PDF/2,628KB)