研究について

研究成果

径厚比を考慮した鋼管部材のモデル化法の各種港湾施設への適用

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1338 2017年12月
執筆者 大矢陽介、塩崎禎郎、小濱英司、川端雄一郎
所属 地震防災研究領域 耐震構造研究グループ
要旨

 平成19年に改正された「港湾の施設の技術上の基準・同解説」では、鋼管を構造部材とする構造物のレベル2地震動に関する偶発状態に対する照査項目として、全塑性モーメントが規定されている。一方、既往の研究より、近年の港湾構造物で多く採用されている径厚比(直径/板厚)が100程度の大径厚比の鋼管杭の曲げ耐力が、全塑性モーメントを下回ることが指摘されている。
 筆者らは、大径厚比の鋼管杭において耐力を過大評価していた、全塑性モーメントを用いた鋼管部材のモデル化法に変わる方法を提案した。提案法は、径厚比および軸力に応じた耐荷性能の評価が可能であり、照査項目として全塑性モーメントの代わりに塑性率を用いた限界曲率を採用することで、大径厚比および高軸力条件下の変形性能の評価が可能である。
 本研究では、提案法を各種港湾施設への適用するため、施設毎の荷重・境界条件に合わせて算定式を構築した。また、地震応答解析を実施し、提案法が各鋼管部材の耐震性能照査に与える影響を評価した。検討施設は、直杭式横桟橋、鋼管矢板式岸壁、矢板式岸壁(控え直杭)および矢板式岸壁(控え組杭)の4施設とした。その結果、従来法と比べ提案法は、大径厚比では、圧縮軸力の作用程度により板厚増加が必要となることがあり、一方で、径厚比が67程度あれば、高い変形性能によって板厚保を減少できることがわかった。

キーワード:鋼管杭、局部座屈、耐震性能照査、杭式桟橋、鋼管矢板式岸壁、地震応答解析

全文 TECHNICALNOTE1338(PDF/1,762KB)