研究について

研究成果

新潟西港内での土砂堆積特性の解明に関する現地調査と水理実験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1334 2017年06月
執筆者 中川康之、高嶋紀子、篠澤巧
所属 沿岸環境研究領域 沿岸土砂管理研究グループ
要旨

 河口港の埋没に関与する主要因とそのメカニズムの把握を目的として、新潟港西港地区(信濃川河口)における定期測量データの活用と、底質・水質調査等の現地観測の実施により、航路・泊地内での地形・底質の時空間変動の特徴や、河川出水時における高濁度水の港内への流入・堆積過程の実態について調べた。また、出水時に行った観測時にみられた港内での密度躍層や懸濁物濃度の空間分布の特徴を考慮して、浚渫域最上流部の水深急変部で生じたと想定される土砂輸送(fluid mud移流)現象について、水槽実験による再現を試みた。
 観測結果によると、港内上流側では出水履歴に対応して地形変化量および底質粒径の変動が大きく、底質組成に関しては含泥率(底質中のシルト分および粘土分の含有率)が10〜90%の間で変化するのに対し、下流側の浚渫域では、水深の増大とともに含泥率と含水比が増大していくものの、記録的な大規模洪水の発生後には砂分の増大が確認された。一方、流入土砂の挙動の特徴として、出水時には航路水域内の上層では、低塩分・高浮遊懸濁物(SS)濃度、下層では高塩分・低SS濃度となる明瞭な塩分とSS濃度の界面が形成されることを確認した。さらに、浚渫域上流部においては、高塩分・低SS濃度層のさらに下層の海底面近傍に、湿潤密度が1,100~1,200kg/m3前後のいわゆるFluid mud層が30cm以上の厚さで形成されていることを明らかとした。   
 水槽実験では、浚渫域を模した水深急変部に流下した高濃度濁水の挙動実験を行い、水底斜面上のFluid mud移流(重力流としての斜面床直上の高濃度濁水の流下)の再現に成功した。また、流下する流れの流速(乱れ)の条件に応じて、上流側での濁水濃度の希釈効果によりFluid mud移流の発生に影響を及ぼすことを示した。

キーワード:河口港、流下土砂、Fluid mud、浚渫、密度界面

全文 TECHNICALNOTE1334(PDF/1,099KB)