研究について

研究成果

長期海洋暴露試験に基づく鋼管杭の防食工法の耐久性評価に関する研究(30 年経過時の報告)

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1324 2016年06月
執筆者 山路徹、与那嶺一秀、審良善和、阿部正美、原田典佳、田中隆太、角野隆、香田一哉、金杉賢、後藤宏明、松田英樹、江口宏幸、松井良典、岸慶一郎、久保田一男、永尾直也、星野雅彦、川瀬義行、小泉文人、小林裕、増田和広、吉川幸雄、中村 聡志
所属 構造研究領域 材料研究チーム
要旨

 海洋環境に位置する鋼構造物の防食方法として、海水中および海底土中部に対しては電気防食工法、干満帯より上部の環境には被覆防食工法が適用されている。この両工法に対して、①設計時に性能を照査する方法、②維持管理時に現状の防食性能を評価する方法および将来の性能低下を予測する方法の確立が求められている。電気防食工法については、概ね確立されているが、被覆防食工法については、いずれも未確立である。
 一方、波崎海洋研究施設砕波帯総合観測用桟橋の鋼管杭には、流電陽極方式電気防食工法および各種の被覆防食工法が適用されている。1984 年から開始された長期海洋環境暴露試験は、2014 年度に30 年が経過した。本研究では、20 年以上が経過した各種防食工法を主対象として、海洋環境下における各種防食工法の耐久性評価および性能評価手法の確立を目的として、30 年経過時に各種調査を行った。主な研究成果を以下にまとめる。
(1) 主な被覆防食工法における、20 年経過時(2004 年度)からの変化の概要を以下にまとめる。
・塗装:耐候性に優れる上塗りを行っていない場合、塗膜表層部に劣化進行が確認された。ただし、厚膜形の種類については、塗膜下の鋼材腐食は開始していなかった。
・水中硬化形被覆(パテタイプ):一部の種類の場合に軽微な鋼材腐食が開始していた。
・ポリエチレン被覆:20 年からの変化は見られず、被覆材、鋼材いずれも健全であった。
・ペトロラタム被覆:各種のカバー材において、外観上は20 年からの変化は見られなかったが、内 部鋼材においては、一部の工法の場合に部分的に軽微な腐食が開始していた。
・コンクリート被覆:外観上は20 年からの変化は見られなかった。
(2) 塗装、有機被覆(水中硬化形被覆、ポリエチレン被覆、)において、被覆材の電気化学特性(インピーダンス、絶縁抵抗、体積固有抵抗)が性能評価の指標となる可能性が示された。
(3) ペトロラタム被覆、コンクリート被覆において、防食性能を定量的に評価可能な指標の確立 における課題が抽出できた。

キーワード: 海洋環境,鋼構造物,電気防食,被覆防食,性能評価


※添付ファイルは本編のみです。付録が必要な方は、kikaku@ipc.pari.go.jpまでご連絡ください。

全文 TECHNICALNOTE1324(PDF/5,603KB)