研究について

研究成果

疑似点震源モデルのスラブ内地震への適用性に関する検討 -2005 年千葉県中部の地震を例に-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1323 2016年06月
執筆者 長坂陽介、野津厚
所属 地震防災研究領域 地震動研究チーム
要旨

 中央防災会議・首都直下地震対策検討ワーキンググループの報告(平成25 年12 月)によると、首都圏で防災・減災対策の対象とすべき地震の1 つとしてフィリピン海プレート内のスラブ内地震(Mw7.3)が挙げられている。しかし、『港湾の施設の技術上の基準・同解説』には、スラブ内地震を対象とした場合の照査用地震動の設定方法に関する規定が無いのが現状である。そこで、本研究では、スラブ内地震を対象とした場合の照査用地震動の設定方法の確立に寄与することを目的として、2005 年千葉県中部のスラブ内地震(MJ6.0)を対象とし、疑似点震源モデルによる強震動シミュレーションを行い、結果の分析を行った。2005 年千葉県中部の地震は、比較的最近起きた首都直下のスラブ内地震では最大であり、観測記録も多数残されていることから首都直下地震を対象とした強震動シミュレーション手法の格好の検証対象と考えられている。一方、疑似点震源モデルは新しい震源モデルであり、スラブ内地震にも適用性が期待されるが、首都直下のスラブ内地震への適用例はない。本研究の強震動シミュレーションでは首都圏に高密度に配置された強震観測地点を対象とし、速度波形、加速度フーリエスペクトル、速度PSI 値について計算結果と観測結果との比較を行うとともに、誤差の定量的な評価も行った。その結果、全体として、疑似点震源モデルを用いた強震動シミュレーションは観測記録を非常に良く再現しており、スラブ内地震を対象とした強震動シミュレーション手法として有望であることが分かった。ただし一部の地点では誤差が見られたため、その傾向を分析し誤差要因について検討を行った。その結果、遠方での高周波成分の過小評価は伝播経路での減衰特性(Q 値)の与え方に原因があること、震央の西側で見られた中間周波数帯域の過小評価は、現状の疑似点震源モデルで考慮していない震源断層の破壊伝播効果によるものであることが推察された。特に震源断層の破壊伝播効果を疑似点震源モデルにどのように取り入れていくかは今後の重要な検討課題となる。

キーワード:強震動シミュレーション,疑似点震源モデル,スラブ内地震,首都直下地震

全文 TECHNICALNOTE1323(PDF/18,178KB)