研究について

研究成果

高潮津波シミュレータ(STOC)による津波被害解析手法

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 55-2-1 2016年06月
執筆者 富田孝史、本多和彦、千田優
所属 アジア・太平洋沿岸防災研究センター アジア・太平洋沿岸防災研究センター
要旨

 2011年3月11日の東日本大震災では、被災地における防災計画等で想定していた津波よりも高い津波が来襲して、東北および関東地方に甚大な津波災害が発生した。海岸や港湾に押し寄せた津波は防潮壁・防潮堤を越流し、臨海部を広く浸水した。津波は浸水するだけでなく、沿岸の防潮施設等の社会基盤施設や、住宅等の建築物を破壊した。さらに、海上の船舶、陸上の自動車、コンテナ等を押し流し、漂流物化した。津波災害に備えて対策を施すためには、起こり得る災害を推定することが必要である。
 東日本大震災の教訓から、最大クラスの津波による浸水想定が行われるようになっている。最大クラスの津波の場合、沿岸の防潮施設の設計対象津波より高いのが一般的であるので、浸水等の津波の影響が陸上に及ぶ、しがたって、構造物等により津波影響を低減する方策の創出も今後の重要な課題である。
 現在、津波の被害想定に使用する津波の数値計算モデルは静水圧の仮定を用いることが基本になっている。しかし、津波が構造物と干渉する場合には、一般的には静水圧の仮定は適用できない。さらに、久慈港を襲った東日本大震災の津波は静水圧の仮定が適用できない波状段波となった。波状段波はそうでない津波に比べて最大水位の到達点が高くなること、それに伴って構造物に及ぼす波圧も、波状段波にならない津波より高くなることが知られている。
 港湾空港技術研究所では、高潮津波シミュレータSTOCを開発してきており、そこには静水圧を仮定しない3次元モデルを含んでいる。STOCについては2005年に港空研報告として報告しているが、その後に行った漂流物モデルなどの開発・実装、精度向上のための改良、さらに模型実験との比較や東日本大震災における津波被害の再現計算を通じて、STOCの検証を行った。ここにその内容を報告する。

キーワード:津波、波上段波、砕波、浸水、漂流物、数値計算モデル、3次元、STOC、検証

全文 REPORT55-2-1(PDF/5,408KB)