研究について

研究成果

港湾鋼構造物の海底土中部の電気防食特性および土壌抵抗率を考慮した電気防食設計に関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1314 2015年12月
執筆者 山路 徹、宇津野 伸二、与那嶺 一秀、審良 善和、小林 浩之、渡部 要一、吉田 倫夫、前薗 優一、川瀬 義行、松本 茂
所属 構造研究領域 材料研究チーム
要旨

 我が国における港湾鋼構造物には、海水中および海底土中部に対して電気防食が適用されている。しかしながら、海底土中部における流入電流量は調査が困難であるため、実態については十分把握されていない。このため、電気防食設計における防食電流密度は、鋼材の根入れ長に関係なく一定の設計電流密度を用いている。そこで、本研究では、防食設計時における設計精度および維持管理のための陽極消耗量の予測精度向上のために、根入れの非常に長い羽田空港D 滑走路連絡誘導路部の単杭部において、海底土中部の流入電流量および鋼材の電位を連続測定し、海底土中部の電気防食特性について検討を行った。主な研究成果を以下にまとめる。
(1) 海底土中部では海底面からの深度が深くなるにつれ防食管理電位に達するまでの期間が延び  るものの、電気防食によって十分な防食効果が得られることが確認された。
(2) 海底土中部に流入する電流密度は、海底面付近においては、初期には設計電流密度よりも大  きくなるが、エレクトロコーティング等による鋼材表面の環境改善が起こり、流入電流密度が  次第に低減する傾向を示した。一方、海底面から-10m 以深においては、設計電流密度に比べ非  常に小さな値を示した。
(3) 海底土中部の電気防食メカニズムに関して、微弱でも防食電流を供給することにより、経時  的な鋼材表面の溶存酸素濃度の減少とアノード反応の抑制、さらに脱気環境中でのpH上昇に  よる平衡電位の卑化の総合的な効果によって、所定の防食電流以下であっても鋼材の防食は達  成されると考えられた。
(4) 地盤調査で採取される不撹乱試料を用いた調査から、土質特性と土壌の電気抵抗率(土壌抵  抗率)との間に相関性を確認し、土壌抵抗率が防食電流の供給に影響を及ぼすことを確認した。  また、有限要素法を用いた電位・電流密度分布解析による土壌抵抗率を考慮した電気防食設計  手法を提案した。

キーワード:鋼構造物、電気防食、海土中、防食電流密度、土壌抵抗率

全文 TECHNICALNOTE1314(PDF/6,116KB)