研究について

研究成果

マイクロフォーカスX線CTスキャナを用いた地盤工学への新たなアプローチ

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1313 2015年12月
執筆者 松村 聡、水谷 崇亮、篠永 龍毅
所属 地盤研究領域 基礎工研究チーム
要旨

 近年の地盤工学分野におけるX線CTスキャナの利用は、単なる地盤内挙動の観察に留まらず、高度な画像解析手法の助けを借りて、精細な力学特性評価に役立てられつつある。不均質かつ多種多様な材料特性を有する地盤の挙動を精緻に予測するためには、微視的構造の理解が重要な場合も多く、X線CT技術を利用した研究への要請は今後益々高まるものと思われる。
 地盤研究領域基礎工研究チームでは、2003年に導入されたマイクロフォーカスX線CTスキャナを2015年に更新し、新たな装置を導入した。本研究では、更新されたX線CTスキャナの動作、性能確認を種々の地盤材料を用いて実施した。その後、地盤工学問題への新たなアプローチとして、X線CTスキャナを用いた2つの研究課題に取り組んだ。1つ目は、X線CTスキャナの模型実験への適用である。2つ目は、X線CTスキャンで得られた画像を用いた土供試体の複製である。1つ目の課題では、旧装置において空間解像度等の制約により適用が困難であった模型実験を実施し、水平載荷を受ける組杭周辺地盤の観察を試みた。これにより得られた画像に適切な画像解析を行うことで、組杭周辺の複雑な地盤変形の様子を可視化し、その影響範囲を同定することが可能となった。 2つ目の課題では、X線CTスキャンで得られた土供試体の画像をもとに、その土粒子配列構造を3次元造形により復元した。さらに、造形された土供試体のレプリカについて、力学試験を実施し、その力学挙動を明らかにした。試験結果より、密度が等しい土供試体であっても、土粒子配列構造の違いにより、土の巨視的な力学挙動に影響を与えることが明らかとなった。

キーワード:マイクロフォーカスX線CT、模型実験、画像解析、3次元造形

全文 TECHNICALNOTE1313(PDF/3,295KB)