研究について

研究成果

港湾地域地震観測におけるデータ伝送方法の改良-地震動情報即時伝達システムの開発-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1310 2015年09月
執筆者 若井 淳、野津 厚、菅野高弘、長坂 陽介
所属 地震防災研究領域 地震動研究チーム
要旨

 本稿では,港湾地域強震観測のデータをより迅速に回収し,地方整備局等への地震動情報の提供 をより迅速に行うために新たに開発したシステム(地震動情報即時伝達システム)の紹介を行った. 開発したシステムは,現地の強震観測小屋に設置された周辺機器(小型PC,ルータ等)と,小型PC 上で稼働するソフトウエア,および,当所に設置されたサーバ上で稼働するソフトウエアからなる. 強震計が地震を検知すると,小型PC 上のソフトウエアが強震計から波形データを吸い上げ,当所サ ーバに転送する.当所サーバでは,受信した記録から最大加速度,計測震度相当値,PSI 値等の値を 読みとり,メールで配信する.メールの文面の作成にあたっては,利用者が受信した情報を活用し やすくなるよう,細心の注意を払っている.
  従来用いられてきたデータ回収方法であるダイアルアップ方式と比較すると,当所の職員が出勤 していない夜間等であっても,地方整備局等へ地震動情報を迅速に届けられるメリットがある.ま た,2011 年東北地方太平洋沖地震の発生を踏まえ,津波を伴うような大地震の発生が予想される地 域においては,地震動の終了から津波の到達までの短い時間に記録の回収を行うことが重要な課題 であるが,今回開発したシステムでは,システムの各要素が期待通りに機能すれば,地震後おおむ ね10 分程度の間に強震計の波形ファイルのコピーが当所サーバ内に作成されることになるため,記 録の回収がより確実になると期待できる.
 本システムは,港湾地域強震観測で使用されている既存の強震計のうち,通信機能を有するもの 全てに対応しており,また,現地の強震観測小屋に周辺機器を設置しソフトウエアをインストール するだけで比較的簡単に導入できることもあり,2011 年の最初の導入以降着実に普及しており,2014 年末の時点では136 地点中80 地点に導入されている.
 ただし本システムに関しては残された課題も数多く存在しており,引き続きそれらの解決に取り 組んでいきたいと考えている.

キーワード:地震動,港湾地域強震観測,伝達システム,PSI 値,津波

全文 TECHNICALNOTE1310(PDF/1,253KB)