研究について

研究成果

津波に対するケーソン式防波堤マウンドと腹付工の安定性

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 54-2-2 2015年09月
執筆者 高橋 英紀、佐々 真志、森川 嘉之、渡部 要一、高野 大樹
所属 地盤研究領域 動土質研究チーム
要旨

 津波が来襲する際のケーソン式混成防波堤において、マウンドと腹付工が複合した地盤の抵抗メカニズムは明らかになっておらず、その安定性評価手法も確立されていない。また、港内外の水位差によって発生した浸透力はケーソン後趾付近の石材を持ち上げる現象(ボイリング現象)を引き起こす可能性があるが、その発生特性も十分には調べられていない。さらに、浸透力はマウンドの支持力を低下させることが分かっているが、その効果について定量的な評価が十分には成されていない。そこで本研究は、遠心模型実験と有限要素解析、円弧すべり計算、浸透流解析を用いて、それらの諸特性を明らかにすることを目的とした。研究の結果、石材による腹付けを行うことで、マウンドと腹付工の地盤抵抗力は増すが、ピーク強度に達するまでに大きな変形を伴う石材特有の荷重~変位関係が現れた。実験結果に基づいて行った円弧すべり計算の精度は高いことが確認され、安定性評価手法として利用できることが示された。 ただし、計算に用いるせん断強度のパラメータ設定に関しては注意が必要である。マウンド内に発生する浸透力について非線形浸透流解析を実施し、非線形性を考慮することで浸透力場を精度良く再現できることが分かった。また、石材の粒径の違いでボイリング現象の発生特性が変化することも明らかとなった。さらに、浸透力がマウンドの支持力を低減させることが実験と解析で示された。検討した断面では、支持力の低減率は10~16%程度(水位差が8.3~9.3 m)であった。

キーワード:津波、防波堤、マウンド、腹付工、浸透、遠心模型実験、有限要素解析、円弧すべり

全文 REPORT54-2-2(PDF/4,408KB)