研究について

研究成果

NOWT-PARIとCADMAS-SURF/2Dとのリアルタイム 片方向接続計算法に関する検討

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 54-2-1 2015年09月
執筆者 平山 克也、中村 隆志
所属 海洋研究領域 波浪研究グループ
要旨

 Navier-Stokes式を直接解く CADMAS-SURFは、砕波を伴う複雑な波浪変形に加え、時間発展的な波力や越波をも算定可能であることから、耐波設計等に適用される機会が増えている。一方、計算コストの制約から港湾全体を含むような広範囲を対象とする検討は、現在の計算機の性能をもってしても困難である。そのため実務レベルでの適用例は、構造物近傍の断面計算に限られることが多い。そこで近年では、計算コストを低減しつつ平面的な波浪変形の影響を考慮するために、平面波浪場の算定実務で多くの実績を有するNOWT-PARIを外部モデルとして、CADMAS-SURF/2Dと沖から岸へ接続する片方向接続計算の実施が検討されている。
 これを実現するためには両者の接続境界上で水平流速の鉛直分布を適切に推定する必要があるが、水位変動の時刻歴にFFT法を適用して不規則波形を多数の成分波(規則波)の重ね合わせとして表現し、それぞれの成分波に微小振幅波理論を適用してこれを推定する方法では、両モデルによる計算を同時に進めることができない上、波形の不規則性や非線形性に応じてこれを近似する成分波数が飛躍的に増大するため、計算コストを削減しつつ計算精度を確保することが困難な場合もみられる。
 そこで本研究では、NOWT-PARIで算定される不規則波形上の各時刻の水位と代表流速に着目して、成分波数によらず、水平流速の鉛直分布を逐次推定する単一成分波近似法を新たに開発した。特に、単一成分波近似法の中核をなす水位と代表流速に対する相対水深の推定には、NOWT-PARIの基礎式に対し新たに導出した非線形分散関係式を用いた。この方法を用いて実施したCADMAS-SURF/2Dとのリアルタイム片方向接続計算では、FFT法に比べ非線形性が強い波に対しても効率的かつ高精度に、接続境界における水位を安定に算定できることを確認した。なお、水位変動の時刻歴データを予め必要とするFFT 法とは異なり、水位変動の鉛直分布をリアルタイムに推定できる単一成分波近似法は、将来的に双方向接続計算へと拡張できる可能性を有すると考えられる。最後に、NOWT-PARIで算定される多方向不規則波を対象とした場合に不可欠なCADMAS-SURF/3Dとの接続計算について、これを実現するために今後解決すべき課題について整理した。

キーワード:NOWT-PARI、CADMAS-SURF、接続計算、単一成分波近似法

全文 REPORT54-2-1(PDF/2,131KB)