研究について

研究成果

埋設鋼管杭の変状計測システムの開発

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1304 2015年03月
執筆者 松本さゆり、平林丈嗣、田中敏成、白井一洋、吉江宗生、水谷崇亮、片倉景義
所属 新技術研究開発領域 計測・システム研究チーム
要旨

 災害や経年変化等による埋設鋼管杭の変形は、構造物の耐力に影響を及ぼす可能性があるため、正確に取得することが重要である。既存の方法として、挿入式傾斜計(Borehole Inclinometer)により鋼管杭の傾斜を定期的にモニタする方法がある。これは施工時に鋼管杭の内壁に計測用のガイド管を設けておく必要があり、ガイド管の設置がない埋設鋼管杭ではその傾斜を適切に測ることは難しい。また、埋設鋼管杭の健全度を調査するために、傾斜と断面形状を取得することは有用と考えられたが、その様な方法は存在せず、新たな開発が望まれた。  
 初めに、超音波式側壁測定装置(KODEN社製、DM-604)の適用を試みた。超音波式側壁測定装置は高層ビル等の基礎杭用掘削孔の打設前検査に用いられ、掘削孔の鉛直度を確認する装置である。これは、水を満たした掘削孔で超音波センサを下降または上昇させ、超音波センサから内壁までの距離を計測すると同時に放電記録紙に記録し、掘削孔の鉛直度を確認するものである。従来の超音波式側壁測定装置の使用方法では、埋設鋼管杭の傾斜がわずかな場合は断面形状の計測が可能であったが、埋設鋼管杭の傾斜が大きい場合や斜杭の場合には超音波センサが管壁に接触し回転してしまう不適な状況を確認した。  
 次に、超音波センサとジャイロを台車に搭載して埋設鋼管杭内に挿入する方法を提案し、傾斜と表面の凹凸の計測が可能であることを示した。これらの結果を基に、埋設鋼管杭内のより詳細な断面形状が必要と分かったので、超音波式側壁測定装置の内部基盤より受信信号を直接収録して解析する方法にて精密計測を行い、おおむね良好な成果を得た。本改良により、超音波式側壁測定装置の公称精度2%から0.5%程度へ向上させることができた。また、これらの計測に必要な解析用アプリケーションを作成したので、それらについても資料としてまとめておく。

全文 TECHNICALNOTE1304(PDF/4,035KB)