研究について

研究成果

杭係留方式浮体の津波による被災メカニズムの検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1299 2015年03月
執筆者 有川太郎、中野訓雄、城戸崎新、島田潔、三上隆、西和宏、塚原靖男
所属 海洋情報研究領域 上席研究官(高潮防災担当)
要旨

 東日本大震災の津波による港湾構造物の被害が甚大な中、宮城県では大きな損傷に至らなかった浮桟橋(浮体)も複数あり、震災直後も早期に使用できたことや、係留されていた船舶への被害拡大をおさえる働きもあることが調査結果から確認された。一方、これまで浮体について津波を考慮した設計事例や知見は殆どなく、津波に対する浮体の設計手法も確立されていない。  
 そこで、本研究では、震災による宮城県内の浮体の被災状況を整理したうえで、津波に対する浮体の特性を知ることを目的とし、津波を想定した孤立波に対する杭係留方式浮体の水理模型実験をおこない、係留反力や動的挙動を明らかにするとともに、数値計算を用いて東日本大震災の津波の状況を把握、被害を受けた浮体の被災メカニズムを検証することで津波を考慮した係留杭の設計手法について検討した。本実験で得られた主要な結果を以下にまとめる。
(1)水平方向の係留反力は流速による動圧に比例、抗力係数は1.2程度と考えられる。
(2)鉛直方向の係留反力は、津波水位により浮体が上昇し係留杭の杭頭部に浮体や係留ローラー、連絡橋が接触した状態から発生し、浮体が全没したときは浮体の余剰浮力とほぼ同程度の力と考えられる。
(3)浮体の余剰浮力が杭頭部に作用した場合、常時ほとんど発生しない引抜き力が係留杭にかかるため、海底地盤から杭が引抜かれ浮体が流出するなど被害が大きくなることが考えられる。
(4)水平流速2.5~3m/sで浮体は部分冠水から転覆への挙動を示すが、浮体が全没する状況では転覆に至ることはない。
(5)杭頭への接触を想定する場合は係留杭の間隔をできるだけ広くすること、係留ローラーは浮体重心より下に設置するほうが、流速に対する浮体傾斜角を小さくする効果がある。

全文 TECHNICALNOTE1299(PDF/3,974KB)