研究について

研究成果

埋設型センサによる桟橋上部工RC部材の鉄筋腐食モニタリングに関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1294 2014年12月
執筆者 岡崎慎一郎、 加藤 絵万、 川端雄一郎、 岩波 光保
所属 構造研究領域 構造研究チーム
要旨

 港湾施設は一般に厳しい塩害環境下にあって、劣化や変状が進行しやすいことから、効果的かつ効率的な維持管理が求められている。維持管理にあたっては、部材の保有性能の定量的評価と将来予測が必要であり、そのためには、構造物や部材の劣化程度に関する情報の取得が不可欠である。桟橋上部工などの鉄筋コンクリート部材における鉄筋腐食に関しては、コンクリート表層に変状が現れてから初めて、腐食の発生を目視により把握できる。そのため、鉄筋が腐食して劣化が顕在化する以前の、鉄筋腐食が発生した時点を、非破壊により把握する手法の確立が必要とされている。本研究では、埋設センサを活用した自然電位および分極抵抗のモニタリングにより、部材中の鉄筋腐食の判定手法について検討を行った。
 小型試験体および、大型試験体中の鉄筋に埋設センサを設置し、1日2度の海水噴霧環境下においての自然電位の長期的な推移を追跡した。小型試験体での検討の結果、本研究の曝露環境下においては、海水噴霧終了後に自然電位は最も卑になることを確認した。また、この時刻における自然電位により、ASTM基準に準じた腐食の判定が妥当であることを確認した。大型試験体による検討においては、局所的に配置したセンサによる自然電位の測定値群が、センサ設置鉄筋のすべての箇所の自然電位を正規母集団から取り出されたとみなせることを確認した。この結果、測定値群から、すべての鉄筋上の自然電位の母集団の平均値を推定することができ、鉄筋上の半数の箇所が腐食に至る時刻を概ね推定できることを確認するとともに、センサ数が推定の信頼性に与える影響について検討を行った。また、自然電位と分極抵抗を組み合わせることにより、自然電位または分極抵抗のみの場合よりも腐食判定の精度が向上することを確認した。

全文 TECHNICALNOTE1294(PDF/7,421KB)