研究について

研究成果

SPGAモデルによる歴史地震の震度分布の再現-その手順の一例-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1290 2014年09月
執筆者 野津厚、 若井淳、 長坂陽介
所属 地震防災研究領域 地震動研究チーム
要旨

 SPGA モデル(野津他、2012)は特性化震源モデルの一種であり、これまで2011年東北地方太平洋沖地震や2003年十勝沖地震のような海溝型巨大地震に適用され、実際に観測された強震動、特に、港湾構造物に対して影響しやすい周波数帯域の強震動を精度良く再現できることが確認されている。 このSPGAモデルの利用方法の一つとして、歴史地震の再来を想定して強震動評価を行う場合への適用が考えられる。その場合、歴史地震による広域での震度分布と整合するようにSPGAモデルを設定することが求められるが、これまでのところ、実際にそのような条件を満足するようにSPGAモデルを設定した事例は少なく、この面で実務者の参考になるような資料は少ない状況である。そこで、本研究では、実際にいくつかの歴史地震を対象として、広域での震度分布と整合するようにSPGAモデルの設定を行い、その手順を明示することを試みた。研究の対象としては、南海トラフで過去に発生した海溝型巨大地震のうち、規模の異なる地震として、1707年宝永地震(Mw8.7)と1946年南海地震(Mw8.1)を取り上げた。震源モデルを構成するSPGAの個数と位置については、震度インバージョン解析結果(神田他、2004)および野津・長尾(2012)の経験式に基づいて設定した。 個々のSPGAのパラメター(地震モーメント、面積)については、野津・長尾(2012)の経験式から初期値を設定し、それによる強震動シミュレーション結果が広域での震度分布と整合しない場合にパラメターのチューニングを行った。強震動シミュレーションには経験的サイト増幅・位相特性を考慮する手法(野津他、2009)を用いた。その結果、対象とした地震について、広域での震度分布と整合するようなSPGAモデルを作成することができた。1707年宝永地震については東海から四国にかけて6箇所のSPGAを含むモデル、1946年南海地震については潮岬付近から四国にかけて3箇所のSPGAを含むモデルが得られた。

全文 TECHNICALNOTE1290(PDF/1,614KB)