研究について

研究成果

重量コンクリートの港湾構造物への適用に関する実験的検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1287 2014年06月
執筆者 川端雄一郎、加藤絵万、 河村直哉、山路徹、 岩波光保
所属 構造研究領域 構造研究チーム
要旨

 防波堤の設計では、波力に対して堤体が滑動もしくは転倒しないような質量が求められる。しかしながら、施工条件によっては、ケーソンの堤体幅を十分に確保できない場合もあり、堤体質量を増加させる方策の一つとして、高密度骨材を用いたコンクリート(以下、重量コンクリート)を適用することが考えられる。近年では、従来重量コンクリート用骨材として使用されてきた磁鉄鉱や赤鉄鉱などの鉄鉱石が需給逼迫や価格高騰などの問題から現在では入手困難な状況となっており、重晶石や人工重量骨材である金属スラグ系骨材や酸化鉄粉といった新規の高密度骨材を用いた重量コンクリートが開発されつつある。そこで本研究では、重晶石や人工重量骨材を用いた重量コンクリートの力学特性および耐久性を把握するとともに、重量コンクリートを用いたRC部材の曲げ耐荷性状およびせん断耐荷性状について検討を行った。その結果、重晶石を用いたコンクリートにおいて破壊エネルギーが普通コンクリートの60%に低下すること、また短繊維を混入することで破壊エネルギーの改善が可能なことを示した。人工重量骨材には金属鉄が含まれるため、酸素の供給が多い飛沫帯環境では骨材腐食による錆汁がコンクリート表面に発生するが、干満帯環境においては錆汁の発生が少なくなることから、干満帯や海中部に位置する構造物や部材には適用できる可能性があることを示唆した。さらに、RC はりの載荷試験から、重晶石を用いたコンクリートにおいて、RC はりの斜めひび割れ発生荷重が普通コンクリートの約60~70%であり、せん断耐力の改善方策として短繊維を混入することが有効であることを示した。

全文 TECHNICALNOTE1287(PDF/3,544KB)