研究について

研究成果

表層地盤の非線形挙動を考慮した2011年東北地方太平洋沖地震の強震動シミュレーション

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1284 2014年03月
執筆者 野津厚、若井淳、長坂陽介
所属 地震防災研究領域 地震動研究チーム
要旨 海溝型巨大地震などの想定地震に対する強震動予測を行う場合に、表層地盤の非線形挙動の影響を考慮することは重要であり、そのための方法についてはこれまでも提案を行ってきている(例えば野津・盛川、2003)。しかしながら、これまでは、表層地盤の非線形挙動の影響を受けた強震記録が限られていたことなどから、手法の検証は断片的なものに留まっていた。そこで、本研究では、2011年東北地方太平洋沖地震の際に取得された強震記録、および、著者らが開発した震源モデル(野津・若井、2012a)を活用して、表層地盤の非線形挙動を考慮した強震動シミュレーションを行い、その有効性の確認を行った。具体的には、東北地方太平洋沖地震の際に得られた強震記録のうち、表層地盤の非線形挙動の影響が明確に表れているものに着目し、上述の震源モデル、および、経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震動評価手法(野津・菅野、2008)を用いた強震動評価を行った。その際、表層地盤の非線形挙動の影響を既往の方法(野津・盛川、2003)により考慮した。この方法は、堆積層における平均的なS波速度の低下率を表すパラメター(ν1)および堆積層における平均的な減衰定数の増分を表すパラメター(ν2)を用いる方法である。これらのパラメターのうちν1については主に既往の研究(若井・野津、2013)で整理されているものを用い、ν2については、観測波形を最もよく説明するように設定した。表層地盤の非線形挙動の影響を受けた地点において、パラメターν2を考慮せずに強震動評価を行うと、強震動の継続時間を過大に評価する傾向が見られた。検討したいずれのケースでも、これら二つのパラメターを考慮した解析を行うことにより、観測記録の再現性は向上した。このことから、非線形性を考慮した強震動シミュレーションの有効性が確認できたと考えられる。この結果に基づき、予測問題におけるパラメター設定方法についても検討を行った。
全文 /PDF/no1284.pdf