研究について

研究成果

防波堤開口部の耐津波安定性についての実験ならびに数値計算

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1274 2013年09月
執筆者 作中淳一郎、有川太郎
所属 海洋研究領域 耐波研究チーム
要旨  津波の陸上への遡上の防止あるいは軽減を目的として建設されている防波堤は開口部を狭めることで津波の港内への流入を抑制させる。そのような防波堤では開口部面積を縮小するために、開口部に潜堤を設けることが多い。しかし、津波発生時には著しい狭窄部となる開口部に強い流れが発生することが予想される。こうした流れに対して、開口部は安定でなければならない。  開口部の安定性に関する既往の研究では、実験により潜堤および被覆ブロックの滑動安定性の評価手法が提案されている。しかしながら、数値計算を用いることで任意の場所の流速および圧力を算出することが可能であり、潜堤に作用する流体力、潜堤および被覆ブロックの滑動安定性のメカニズムをより詳細に検討できる。  本研究では、数値シミュレーションを用いて、防波堤開口部における潜堤ならびに周辺構造物の安定性の検討を行うことを目的とする。堤頭部周辺の流れや渦を計算するために、有川ら(2005)によって開発された3次元数値波動水槽(CADMAS-SURF/3D、以下CS3Dと呼ぶ)を用いて、開口部の流れ場の計算を行い、潜堤および被覆ブロックの滑動安定性の評価を行う。また、数値計算の妥当性を検証するために、大規模な水槽に湾口防波堤の開口部の模型を作製し、津波を想定した流れを発生させて、開口部周辺の流れ場、潜堤に作用する流体力の計測および潜堤、被覆ブロックの滑動実験を行う。本研究で得られた主要な結果を以下にまとめる。 (1) 防波堤開口部周辺の流速、水位については、CS3Dを用いて誤差20%以内で再現できることを確認した。潜堤に設置した計測点における圧力の再現性については、ケースおよび計測場所によって異なることがわかった。 (2) CS3Dを用いることで潜堤に作用する水平圧力fH を実験値の誤差10%以内の範囲で、揚圧力fV を実験値の誤差30%以内の範囲で再現できることがわかった。潜堤の滑動実験結果からCS3Dを用いた滑動安定性の評価の妥当性を確認できた。 (3) CS3Dを用いて算出した流速およびイスバッシュ定数をCERCの式(1977)に代入し、被覆ブロックの安定限界重量を算定したところ、滑動すると判定された領域の被覆ブロックが、実験で初期移動することがわかった。また、CS3Dで算出した重量比の平均値と実験における被覆ブロックの被災率に相関関係があることもわかった。
全文 /PDF/no1274.pdf