研究について

研究成果

乱れの生成・逸散過程を考慮した砕波モデルの汎用化に関する検討

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 052-03-03 2013年09月
執筆者 平山克也、宇野喜之
所属 海洋研究領域 波浪研究チーム
要旨  鉛直積分型波動モデルにおいて、砕波減衰モデルを導入する試みが多くなされている。そのうち、平山・平石(2004a)は、段波モデルによる乱れ生成項と1方程式乱流モデルを導入したブシネスクモデルを開発した。その計算精度は、様々な形状の断面模型実験や、リーフを含む模型実験結果、現地リーフ上で取得された観測データとの比較などによって数多く検証されている。しかしながら、乱流モデルにおける唯一のフリーパラメータである乱れスケールや、砕波に伴う乱れの生成・逸散過程のモデル化の妥当性に関する議論は必ずしも十分ではない。そこで本研究では、段波モデルによる乱れの生成率、乱れエネルギー逸散率及び渦動粘性係数の算定に寄与する乱れスケールl* を取り上げ、この値が平山・平石(2004a)のブシネスクモデルによる砕波計算に与える影響を考察するとともに、より妥当な設定法を提案し、計算精度および汎用性の向上を試みた。  これらの結果、得られた主要な結論は以下の通りである。  1)不規則波の砕波実験の結果との比較から、乱流モデル中の乱れスケールの大きさは砕波時の波高程度が適切であり、このように改良した砕波モデルにより、波形勾配が異なる様々な砕波形態に対し、計算精度の向上が期待できることを確認した。  2)規則波の砕波計算を行い、乱れの生成量と逸散量の平衡状態では、場に存在する乱れエネルギーを正しく評価することが砕波状況の再現にとって重要であることを明らかにした。  3)不規則波の砕波に伴い時々刻々変化する場の乱れエネルギーの空間分布まで適切に再現する改良モデルでは、乱れエネルギーから算定される渦動粘性係数の時空間分布がより妥当に評価され、砕波帯内波高や平均水位の空間分布のみならず、不規則波形まで再現できるようになった。
全文 /PDF/vol052-no03-03.pdf