研究について

研究成果

高含水比底泥の挙動解明とモデル化

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 052-03-02 2013年09月
執筆者 中川康之
所属 沿岸環境研究領域 沿岸土砂管理研究チーム
要旨 水中懸濁物が豊富な内湾域では、海底堆積物の表層に含水比が高く流動性に富んだ底泥(流動泥)が広範囲にみられることが多い。本研究では、海底付近の水質や底生生物の生息条件とも密接に関係する高含水比底泥の挙動に注目し、波浪や潮流による移動現象のモデル化を試みた。モデル化に先立ち、東京湾羽田沖周辺を対象とした底質分布に関するデータや、台風擾乱時にとらえられた底面境界近傍での流況およびSS濃度変動の現地データの解析を通じて、高含水比底泥の堆積分布と挙動特性の解明を試みた。堆積分布の特徴として、沖合深場(水深10m以深)の海底表層には、ほぼ恒常的に含水比400%以上の高含水比底泥が10cm程度の厚さでみられる。また水深約25mの観測点で計測された、高波浪および河川出水時における底泥の侵食・堆積現象は、巻き上げや水中からの沈降だけでなく底泥層内の輸送によって生じていることを底泥面近傍での土砂収支解析により明らかとした。これらの特徴を反映させた底泥移動のモデル化として、ひとつには高含水比底泥の巻き上げ現象を海水中への拡散現象としてとらえ、拡散フラックス・モデルによる巻き上げ量の算定を行い、観測結果との比較検証を通じて妥当性を示した。さらに、波や流れの底面せん断応力による泥層内の水平輸送について、泥層内の堆積構造を考慮したビンガム・モデルを導入し、3次元流動モデル等との結合により実海域での底泥輸送計算への応用が可能な泥層内の質量輸送フラックスの算定式を新たに導出した。
全文 /PDF/vol052-no03-02.pdf