研究について

研究成果

南海トラフの地震(Mw9.0)を対象とした強震動評価へのSPGAモデルの適用

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1271 2013年06月
執筆者 野津厚、若井淳
所属 地震防災研究領域 地震動研究チーム
要旨  2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)の発生を受け、南海トラフにおいても、従来よりも規模の大きいMw9.0程度の巨大地震を想定し、強震動評価が行われるようになってきた。その場合に用いられる震源モデルは、既往の強震記録を通じて、巨大地震への適用性が検証されたものでなければならない。 著者らは、既往の巨大地震において、大振幅のパルス状の地震波が観測されていることに着目し、これらを含む強震動を適切に再現することのできる震源モデルとして、強震動パルス生成域(SPGA)からなる震源モデル(SPGAモデル)を提案している。本研究は、このSPGAモデルを用い、東海から九州の港湾を対象として、南海トラフの地震(Mw9.0)に対する強震動評価を実施したものである。  SPGAモデルを用いた強震動評価においては、SPGAの位置の設定が一つの課題である。この点に関して、本研究では、事前の予測が困難であるとの立場から極めて多くのケースについて検討を行い、50%非超過、90%非超過等となる地震動を求めた。その際、一般的に利用可能な計算機資源および現実的な計算時間の範囲内で強震動評価が可能となるよう計算上の工夫を行った。  この方法を、東海から九州にかけての16港湾18地点に具体的に適用したところ、計算された90%非超過の地震動は、従来から港湾施設の耐震性評価に利用されてきた地震動よりもはるかに大きい地震動となることがわかった。一方、計算された50%非超過の地震動は、全体的に見ると、従来から港湾施設の耐震性評価に利用されてきた地震動と同程度のPSI値となった。時刻歴波形の特徴としては、特に90%非超過の速度波形が大振幅のパルスによって特徴付けられていることが挙げられる。  今後は、海溝型巨大地震による地震動の一つの大きな特徴が強震動パルスの生成であることを十分認識し、それに対する構造物の耐震性の検討を行っていくことが重要であると考えられる。
全文 /PDF/no1271.pdf