研究について

研究成果

うねり性波浪による越波災害の発生過程の推定とその対策

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1270 2013年06月
執筆者 平山克也、加島寛章
所属 海洋研究領域 波浪研究チーム
要旨  地球温暖化に伴う台風の大型化により、今後、高潮偏差や波の大きさが増加し、海岸堤防において現在想定されている設計外力を超過する可能性が危惧されている。しかし、近年各地で観測される設計値を超える波高の出現要因がこのような長期トレンドの変化によるものなのか、それとも統計上の偶発性によるものなのかは、未だ議論の分かれるところである。一方、平成19年に改訂された「港湾の施設の技術上の基準・同解説」では性能設計における作用に偶発波浪が盛り込まれ、偶発対応施設にあっては、背後地の人命と資産の安全性を確保するとともに、速やかな復旧を可能とする修復性を満足する設計が求められている。しかしながら、最近の高波災害にみられる設計を超える高波の捉え方及び取り扱いについて、統一的な見解は未だ示されていない。  そこで本研究では、作用外力と具体的な被害状況に着目して最近の高波災害を類型化し、その多くがうねり性波浪による越波災害として特徴づけられることから、その発生過程の推定と対策検討を行うとともに、現行の設計体系にこれらを位置づけることを試みた。すなわち、このようなうねり性波浪の発生確率は波高のみに着目した従来の風波とは区別して考える必要があること、及びその波浪変形特性を踏まえ考え得る越波対策工のイメージを提示した。また、越波災害は沿岸方向に空間的に発生することが多いことに鑑み、これを直接算定できる越波モデルを備えたブシネスクモデルを開発し、この現地適用性について検証した。さらに、既設護岸への簡易な越波対策工として提案する土嚢仮設堤を取り上げ、新たに開発した平面2次元越波浸水・排水計算モデルを用いて、うねり性波浪の波浪変形特性とともに面的な越波浸水・排水過程を再現し、護岸施設の安全性と修復性の観点からその効果を検証した。その結果、土嚢仮設堤により護岸背後に創出された遊水池は、短時間越波量の増加が顕著なうねり性波浪による越波を時空間的に平滑化させ、浸水開始時刻の遅延等による浸水被害の軽減効果が期待されることを確認した。
全文 /PDF/no1270.pdf