研究について

研究成果

地震動により損傷した桟橋RC上部工の残存性能評価

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1267 2013年03月
執筆者 川端雄一郎、岩波光保、加藤絵万、西田孝弘
所属 構造研究領域 構造研究チーム
要旨  地震後における被災地の迅速な復旧復興のため、港湾施設の重要性が東日本大震災によって再認識されてきた。一方、現行の桟橋の耐震設計では、より合理的な断面決定が可能となるよう鋼管杭および上部工に一定の損傷を許容している。しかしながら、地震動によって桟橋の構造部材が損傷した場合、供用の不可もしくは限定的な利用などの判断を行う方法は確立されていない。したがって、桟橋の供用可否判断のためには、地震動によって損傷を受けた桟橋の残存耐力評価方法の構築が不可欠である。  本論は、地震動による桟橋、特に上部工の損傷状態と残存性能を関連付けることを目的とし、実験的に桟橋の損傷度と桟橋の残存性能の関係について検討した。まず地震動を模擬した載荷試験により桟橋の損傷過程について検討した。その後上部工の載荷試験を行い、桟橋上部工の残存性能を評価した。さらに、上部工を破壊させた上で桟橋の水平載荷試験を行い、上部工が破壊した桟橋の水平耐力について検討した。  載荷試験の結果、桟橋の水平変位が大きくなると杭頭部近傍の回転変形が大きくなり、杭頭部に損傷が集中することが分かった。これにより、地震動によってRCはりそのものに損傷が少ない状態であっても、杭頭部周辺の損傷状態によって上部工の鉛直荷重に対する支持条件が変化することで、桟橋上部工の残存性能は大きく影響されることがわかった。また上部工の載荷試験の結果から、単純支持はりを仮定した健全なRCはりのせん断耐力の計算値に対して、4δyの最大水平変位を受けた桟橋上部工の残存耐力は65%となることを明らかにした。さらに隣接するスパンの上部工が破壊に至った場合、単純支持はりを仮定したRCはりのせん断耐力の60%程度となること、上部工が破壊した桟橋の残存水平耐力は無損傷の水平耐力とほぼ同等であることを示した。
全文 /PDF/no1267.pdf