研究について

研究成果

海溝型巨大地震による地震動の予測のための震源パラメターの経験式 -強震動パルスの生成に着目して-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1257 2012年09月
執筆者 野津厚、長尾毅
所属 地震防災研究領域 地震動研究チーム
要旨 港湾構造物をはじめ多くの構造物にとって0.2-1Hzの周波数帯域における地震動の予測はたいへん重要である。東北地方太平洋沖地震の際、震源断層に比較的近い宮城県から茨城県にかけての多くの地点で観測された0.2-1Hzの帯域の速度波形は明瞭なパルスによって特徴付けられている。これらの、工学上重要な周波数帯域に表れるパルスを本稿では強震動パルスと呼ぶ。過去において、1995年兵庫県南部地震や1994年ノースリッジ地震のような内陸地殻内地震の際、震源近傍で生じた強震動パルスが大被害をもたらしたことは広く知られている。それに対し、海溝型巨大地震がもたらす強震動パルスの重要性については、これまで十分に認識されているとは言えない。しかしながら、現実に海溝型巨大地震が強震動パルスを生成しており、その周期特性が、内陸地殻内地震がもたらす強震動パルスと大きくは異ならないことから、海溝型巨大地震がもたらす強震動パルスも構造物に大きな影響を及ぼす可能性がある。今後、海溝型巨大地震に対する強震動予測、特に耐震設計を目的とする強震動予測を行う場合には、強震動パルスの生成を意識した震源のモデル化を行うことが極めて重要と考えられる。そこで、本研究においては、まず、海溝型巨大地震による強震動パルスの生成事例を示す。次に、海溝型巨大地震による強震動パルスの再現を目的として構築された既往の震源モデルを整理する。最後に、断層面上で強震動パルスを生成したと考えられる領域(強震動パルス生成域と呼ぶ)の諸特性と地震規模との関係について検討し、地震動の予測のための震源パラメターの経験則を示す。
全文 /PDF/no1257.pdf