研究について

研究成果

強震動を対象とした2011年東北地方太平洋沖地震の震源モデル

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 051-01-02 2012年06月
執筆者 野津厚、若井淳
所属 地震防災研究領域 地震動研究チーム
要旨  2011年東北地方太平洋沖地震は、今日のような密な強震観測網が構築されて以来、初めて発生したM9クラスの巨大地震である。今後、他の地域を対象として、同程度の規模の地震を想定した強震動評価を行う機会が増えるものと考えられる。その際に用いられる震源のモデル化手法および強震波形計算手法は、今回の強震記録によって適用性が確認されたものでなければならない。その際、工学的観点からは、0.2-1Hz程度の強震動の再現性に特に注意を払う必要がある。著者は、この地震の発生以前の段階において、海溝型巨大地震による0.2-1Hz程度の帯域の強震動の予測に関して次のような提案を行っていた。 ①震源モデルとしては、過去の海溝型地震において実測されているパルスの幅と調和的なアスペリティ(本研究ではこれをスーパーアスペリティと呼ぶ)の組み合わせからなる震源モデルを用いること。 ②波形の計算には経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震動評価手法を用いること。 これらのスキームがM8クラスの地震に対して有効であることは既往の研究で確認されている。しかしながら、同様のスキームがM9クラスの地震に対しても適用可能であるかについてはこれまで確認されていない。そこで、本研究では、①②のスキームのM9クラスの地震に対する適用性を調べることを目的とし、東北地方太平洋沖地震を対象として、スーパーアスペリティの組み合わせからなる震源モデルを新たに作成し、それによる強震動シミュレーションを実施した。その結果、宮城県沖から茨城県沖にかけて、一辺が数km程度の9つのスーパーアスペリティを配した震源モデルを用いれば、各地で実際に観測された強震動、特に、工学上重要性の高い0.2-1Hzの帯域の速度波形(パルス状のものを含む)を精度良く再現できることがわかった。また、既往の海溝型巨大地震に関する解析結果との比較を行った。
全文 /PDF/vol051-no01-02.pdf