研究について

研究成果

釜石湾口防波堤の津波による被災メカニズムの検討 -水理特性を中心とした第一報-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1251 2012年03月
執筆者 有川太郎、佐藤昌治、下迫健一郎、富田孝史、辰巳大介、廉慶善、高橋研也
所属 海洋研究領域 上席研究官(耐波設計担当)
要旨 2011年3月11日に生じた東北地方太平洋沖地震津波によって多くの防波堤が被災したが、その大半は、津波越流時に破壊・変形したが、一方で、防波堤における津波越流時の安定性は、これまで研究されておらず、そのメカニズムは明らかではない。約半分のケーソンがマウンドから滑落した釜石防波堤では、ビデオ解析から津波越流時にケーソンが滑落したと推測されている。そこで、本研究では、主に津波越流時の防波堤の安定性を検討することを目的として、釜石の湾口防波堤を対象とした水理模型実験を行い、堤頭部ならびに堤幹部の被災メカニズムおよび対策工について検討した。その結果を以下に示す。 ○開口部周辺の被災メカニズム  開口部に生じる押波時の強い流れによって、開口部の潜堤が滑落し、捨石部が露出した。そのため、引波時における流れによって特に堤頭部周辺のマウンドが洗掘され、堤頭部が傾斜するという被災が生じたと考えられる。 ○堤幹部の被災メカニズム  ケーソンに生じる水平力は、越流により背面に負圧が生じることで、港内外の水位による圧力差よりも増大することがわかった。その増大率は、今回の津波では、水位差による水平力の10%程度であることが実験から明らかになった。また、基礎マウンドの滑動抵抗力や背面の負圧のばらつきによって、ケーソンの被災の状態にばらつきが生じることもわかった。 ○対策工法  ケーソン背面に捨石を設置する腹付け工法は、滑動安定性を向上させる方法として有効であることがわかった。ただし越流による洗掘対策が必要である。
全文 /PDF/no1251.pdf