研究について

研究成果

緊急時における高い運用性を有する高粘度油回収システムの研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1246 2011年12月
執筆者 吉江宗生
所属 新技術研究開発領域 計測・システム研究チーム
要旨 1997年1月に起きたナホトカ号重油流出事故は、最終的に被害額約360億円を計上した未曽有の規模の油濁事故となった。当時の油回収作業現場では、多くのボランティアによる作業が熱心に行われたが、エマルジョン化して粘度が高くなり、海岸のゴミを含んだ重油が使用機材に様々な悪影響を及ぼすことから、油濁防除作業に対する知識の乏しい作業者がこれに対処することは非常に難しかった。このため、国や地方自治体等による技術支援や資機材の不備が後に多く指摘された。  本研究はこうした背景のなか、油濁防除の知識や経験が浅い者によっても効率的に油濁防除作業が可能となる高い運用性に配慮した油回収システムを開発することを目的に行われた。  第1章では本研究が行われた背景と目的について簡単に述べた。第2章では我が国の油濁防除体制の現状について紹介し、油回収機の本格的な研究開発の必要性を述べた。第3章では油回収システムの運用を簡単にするために克服すべき技術的な課題について論じた。第4章では、重機や作業船が入り込めず、手作業を強いられる水深の浅い海岸で、人力で運用できる油回収機として研究開発した「浅海域用の高濃度油回収システム」の研究開発について述べた。第5章では、全国に在船するクレーン付台船を緊急時に油回収船とする「工事用作業船を用いた油回収システム」の研究開発について述べた。第6章では研究開発した2つの油回収システムを通じて、油濁防除作業において運用が簡単な油回収システムの在り方として、高粘度油とゴミによる油回収作業特有のトラブルは自動的に回避され、油回収作業は見て分かりやすいように配慮すべきこと、及びその技術、今後の課題、適用性についてまとめた。
全文 /PDF/no1246.pdf