研究について

研究成果

海洋環境における中流動コンクリートの長期耐久性に関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1245 2011年12月
執筆者 山路徹、内藤英晴、羽渕貴士、末岡英二、清宮埋
所属 構造研究領域 材料研究チーム
要旨 近年の合成構造沈埋函の鋼殻内に充てんするコンクリートには、内部振動機による加振を間欠的に併用することで所要の充てん性と硬化品質を発揮できる、水セメント比40%程度でスランプフロー500mm程度の中流動コンクリート(鋼コンクリートサンドイッチ構造などの合成構造に用いる場合、加振併用型充てんコンクリートとも称す)が多く用いられている。  本研究では、中流動コンクリートが沈埋函用の充填コンクリートとして使用された場合だけでなく、直接海水に接する環境に使用された場合(例:高密度配筋を有するような一般の港湾構造物等)も想定し、中流動コンクリートを用いて作成した供試体を海洋環境(海中部)に10年間暴露し、海洋環境下における長期耐久性について検討を行った。その結果得られた知見を以下に示す。 1) 圧縮強度は10年後においても初期強度(60N/mm2程度)と同程度の高い値を保持していた。 2) コンクリート表面部での劣化状況をビッカース硬さにより調べた結果、コンクリート表面から数mmのごく狭い範囲にしか硬さの低下、言い換えるとコンクリートの劣化(ここでは海水中のイオン(SO42-、Mg2+等)による化学的侵食に起因するものを主に指す)は認められなかった。このことは、海水が接するコンクリートにおいて、劣化が生じるのはごく表層のみであり、大半を占める内部のコンクリートは劣化が生じにくいことを意味している。 3) 塩化物イオン浸透抵抗性は、通常のコンクリートと比較して非常に優れていた。また、時間とともに塩化物イオン浸透抵抗性の向上、細孔容積の減少が確認され、コンクリート内部においては緻密度が長期的に増進していることが確認された。 4) 中流動コンクリートの諸性能(力学特性、塩化物イオン浸透抵抗性等)における加振の有無の差を1.5年間の暴露試験により検討した結果、今回の検討では、加振による明確な差異は確認されなかった。
全文 /PDF/no1245.pdf