研究について

研究成果

東日本大震災で被災した港湾における地震動特性

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1244 2011年12月
執筆者 野津厚、若井淳
所属 地震防災研究領域 地震動研究チーム
要旨 大地震の発生により港湾施設が被害を受けた場合、被害原因の究明、復旧方針の策定を行う上で、港湾施設に作用した地震動を把握することは極めて重要である。東日本大震災で被災した港湾の中には、強震記録が得られている港湾も少なくないが、最近の知見によると、地震動はサイト特性の影響で狭い範囲でも大きく変化することがあるため、強震記録が必ずしも施設に作用した揺れを表しているとは限らない。そこで、本研究では被災した港湾において微動観測および余震観測を行うことによりサイト特性の把握を行い、さらに必要に応じて地震動の事後推定を行った。具体的には、まず、港湾内で微動観測を面的に実施することにより、港湾全体のサイト特性の概要を把握した。特に、施設背後と強震観測地点における微動特性を比較することにより、強震観測地点における揺れが施設に作用した揺れを表しているかどうかの判断を行った。また、強震観測地点における揺れが施設に作用した揺れを表していないと判断される場合には、施設の背後において余震観測を行い、当該地点における詳細なサイト特性を明らかにした。地震動の事後推定はサイト特性置換手法を用いて実施した。本研究で得られた主な成果は以下の通りである。まず、常時微動観測を実施した8つの港湾において港湾全体のサイト特性の概要を把握することができた。一例として大船渡港では、湾口防波堤基部に設置された強震観測地点(大船渡防地-G)と係留施設の背後では微動特性が大きく異なっていることがわかった。従って大船渡防地-Gで得られた記録は湾口防波堤に作用した地震動として扱うことはできるが、係留施設に作用した地震動としては扱うことができないと考えられる。余震観測を実施した7港湾(9地点)では詳細なサイト特性を把握することができた。さらに、これらに基づき、被害を受けた施設等における地震動の推定を4港湾(6地点)において実施した。
全文 /PDF/no1244.pdf