研究について

研究成果

下新川海岸における長周期うねりの越波発生機構とその対策

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 050-04-05 2011年12月
執筆者 加島寛章、平山克也
所属 海洋研究領域 波浪研究チーム
要旨  近年、地球温暖化の影響と思われる台風の巨大化や経路変化に伴い、周期の比較的長いうねり性波浪(本研究では、長周期うねりと呼ぶ)が来襲し、我が国沿岸部において甚大な波浪被害が発生している。特に、地形急変部などの複雑な地形を有する地域では、地形や構造物の影響を受けて局所的な波浪集中や越波増大が懸念される。本研究では、2008年2月に複雑な海底地形を有する下新川海岸で発生した寄り回り波の来襲による越波・浸水被害を対象に、大型の平面水槽を用いて被災当時の波浪場や越波の発生機構の解明、それらを踏まえた効率的かつ効果的な対策工案の検討を行った。  これらの実験の結果、以下のような主要な結論が得られた。  1)被災当時において、急勾配斜面側に面する海岸護岸では、護岸近傍に設置された潜堤・離岸堤群との間の水域で生じる平均水位上昇や来襲波群に伴う水位の長周期変動の挙動が、緩勾配斜面側に面する海岸護岸では、来襲波浪の局所集中による短周期波高の増大が、それぞれ越波流量の増大に大きく影響を与えていることを確認した。  2)越波発生機構を考慮した越波低減の検討では、突堤を設置することにより沿岸方向の水位の長周期変動の抑制が可能となり、また、沖潜堤を設置することにより来襲波浪の抑制に加えて護岸前面水域の平均水位上昇の抑制が可能となることがわかった。この結果、最も越波被害の大きかった地域において、越波流量を5~30%程度低減できることを確認した。  3)長周期うねりの越波低減を考える際には、従来までの短周期波浪の制御のみならず、地形特性等に応じて長周期変動の挙動や平均水位上昇の制御を含めた新たな対策を検討することも重要であることがわかった。
全文 /PDF/99a9d12ccdf254883ce4e5c06fd6520c4cbc550d.pdf