研究について

研究成果

内陸地殻内地震によるやや短周期地震動の再現に適した震源のモデル化手法

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 050-04-04 2011年12月
執筆者 野津 厚
所属 地震防災研究領域 地震動研究チーム
要旨 内陸地殻内地震の震源近傍で観測されるやや短周期パルスは構造物に対して大きな影響を与えるものであると認識されている。兵庫県南部地震を対象とした研究で、これらのパルスはアスペリティに起因するものであること、また、特性化震源モデル(矩形のアスペリティの組み合わせ)を用いた強震動シミュレーションによりこれらのパルスが適切に再現できることが明らかにされ、設計の実務においても特性化震源モデルが積極的に用いられるようになってきている。しかし、特性化震源モデルのパラメタ設定において多く用いられている経験式(Somerville et al., 1999)は主にカリフォルニアのデータに基づいており、最近わが国で多発している内陸地殻内地震の実績が反映されていないという問題点がある。また、上記の経験式の作成において、必ずしも工学上重要なやや短周期パルスの再現に力点が置かれているわけではない。そこで、本研究では、最近わが国で多発している内陸地殻内地震のデータに基づいて、やや短周期地震動の再現に適した震源のモデル化手法について検討を行った。具体的には、兵庫県南部地震以後のわが国における内陸地殻内地震のうち、M6.8を越える6つの地震を対象に、やや短周期帯域の地震動を再現するのに適した特性化震源モデルの構築を行った。その際、波形の計算には経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震波形計算手法を用いた。また、それらの結果を整理することにより、与えられた想定地震の規模から特性化震源モデルのパラメタ、具体的にはアスペリティの面積や地震モーメントを決めるための新たな経験式の作成を行った。新たに得られた経験式は、Somerville et al. (1999)の経験式と比較すると、同じ規模の地震に対して、アスペリティの面積はより小さいという特徴を有する。なお、小さいアスペリティを採用することの具体的影響としては、破壊伝播方向とその逆方向の地震動の差が現状より小さくなることが挙げられる。
全文 /PDF/23ff327a77d00b1cbc0c90a42f2ed8550af03a78.pdf