研究について

研究成果

海岸および港湾整備にかかる水中作業の無人化に関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1236 2011年09月
執筆者 田中敏成
所属 新技術研究開発領域 計測・システム研究チーム
要旨 建設作業の多くは、自然環境下における作業であったり、作業対象そのものが自然物であったり、あるいは人工物であっても作業の進展によってそれらが変化してゆくことから、作業現場ではこれらに対応して多岐にわたる複雑な作業が要求される。これは作業条件の設定や作業の規格化が比較的容易な製造業の工場内などとは大きく異なる点であり、建設業が人力に大きく拠らなければならない一因となっている。とりわけ海岸や港湾整備にかかる水中作業では、海域の透明度、入り組んだ構造物、波浪や潮流等による外乱など様々な条件に制約されていまだ機械力の導入自体が限定的であり、潜水士による水中作業に大きく依存しているのが現状である。しかしながら、長時間の潜水作業は肉体への負担が大きいことから、その労働条件は陸上に比べて過酷な面が多い。また、港内では行き交う船舶も少なくないことから危険の察知や回避が必ずしも容易ではない。ひとたび事故が起これば生命に関わる重篤な事態になりかねないことから、水中作業の無人化はこれらの諸問題に対する根本的な解決手段といえる。  本論文では、海岸および港湾整備における水中作業の現状を示し、ここで列挙した水中作業事例のうちから海岸および港湾整備事業にかかる「① 浸食海岸の汀線測量作業」、「② 海洋浮体構造物の係留装置の点検作業」の二種類の作業についてそれらの作業の無人化手法を提案し検証した。本研究の目的は、ここで取り上げた二種類の作業についての無人化手法を実現することと同時に、所定の環境条件下における特定の水中作業の無人化手法を実現する一連のプロセスをその具体例をもって示すことで、今後実施される同様の取り組みに資することである。また、ここでの水中作業システムのための無人化技術とは自動化技術だけに限定するものではなく、港湾域特有の作業条件を考慮して人間の優れた能力を活用しながらそれを補助する特徴的な遠隔操作技術も重要な基盤技術として取り扱った。  なお、本稿は著者の博士学位論文の書式を変更し、港湾空港技術研究所資料として発表するものである。
全文 /PDF/no1236.pdf