研究について

研究成果

2011年東日本大震災による港湾・海岸・空港の地震・津波被害に関する調査速報

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1231 2011年04月
執筆者 高橋重雄、戸田和彦、菊池喜昭、菅野高弘、栗山善昭、山﨑浩之、長尾毅、下迫健一郎、根木貴史、菅野甚活、富田孝史、河合弘泰、中川康之、野津厚、岡本修、鈴木高二朗、森川嘉之、有川太郎、岩波光保、水谷崇亮、小濱英司、山路徹、熊谷兼太郎、辰巳大介、鷲崎誠、泉山拓也、関克己、廉慶善、竹信正寛、加島寬章、伴野雅之、福永勇介、作中淳一郎、渡邉祐二
所属 アジア・太平洋沿岸防災研究センター アジア・太平洋沿岸防災研究センター
要旨 2011年3月11日14時46分、太平洋三陸沖を震源としたM9.0の海溝型巨大地震が発生し、東日本を中心に甚大な地震と津波の被害をもたらした。被害は特に岩手県・宮城県・福島県で甚大であるが、その周辺の北海道・青森県、茨城県・千葉県などでも大きな被害が出ている。  港湾空港技術研究所では、この災害から港湾・空港・海岸を早期に復旧・復興させるため、技術的な支援を国土交通省等と協力して鋭意実施している。特に、災害の発生直後から、国土交通省のテックフォース(TEC-FORCE、Technical Emergency Control Force:緊急災害派遣隊)の一つとして、港湾などの災害の実態調査隊を国土技術政策研究所と協力し複数派遣しており、また災害原因などの検討も開始している。  本報告書は、港湾などの災害調査の速報である。強震計による地震観測データやGPS波浪計や潮位計による津波観測データの解析や、震源からの津波伝播計算を行うとともに、地震や津波による各港湾などにおける災害の実態を報告するものである。  主要な結論は以下のとおりである。  1) 今回の地震はM9.0と巨大であり、2004年のインド洋大津波のような、これまでの最大級の津波が発生している。GPS 波浪計によって6mを越える津波が釜石港から沖合い18kmの地点で15時12分に観測できており、津波警報に寄与した。水深200mで6mの津波は、浅い沿岸では2から3倍の値となり、釜石港でほぼ10分後にピークとなっている。  2) 10m以上の津波が岩手県・宮城県・福島県の海岸を襲っており、沿岸の町に壊滅的な被害を及ぼし、2万7千人以上の死者・行方不明者となっている。木造家屋の壊滅的流失、車の流失、火災の発生、タンクの油の流失など、これまでも認められたあらゆる津波被害が大規模に発生している。  3) 港湾内では、津波によって船舶が陸上に乗り上げるなどの被害が発生しており、また港湾域の上屋や工場にも甚大な浸水被害が出ている。港湾内には津波によって破壊された家屋や車などが沈没しており、また、津波による流れによって航路や構造物周りの洗掘や堆積が発生している。ただし、防波堤や護岸の多くは、厳しい太平洋の波浪に対して設計されており、非常に大きな津波であったが比較的粘り強く、壊滅的な被害には至っておらず、津波低減の効果があったと考えられる。  4) 地震の被害は、岩手県以北では比較的小さかったが、宮城県から南で被害が発生している。岸壁に被害が少ないところでは、復旧のための早期の港湾活動の再開が可能となっている。  5) 港湾およびその周辺地域早期復旧・復興に向けて、さらに検討を進める必要があり、特に、こうした最大級の津波を十分考慮した防災計画や防護施設の設計体系の構築を考える必要がある。
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