研究について

研究成果

2010年チリ地震・津波による港湾・海岸の被害に関する調査報告書

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1224 2010年12月
執筆者 高橋重雄、菅野高弘、富田孝史、有川太郎、辰巳大介、加島寛章、村田進、松岡義博、中村友昭
所属 アジア・太平洋沿岸防災研究センター アジア・太平洋沿岸防災研究センター
要旨  2010年2月27日15時34分(日本時間、現地では3時34分)チリの太平洋沿岸の南緯36度、西経73度付近でMw8.8の地震が発生した。本報告は、4月23日から30日にチリ地震・津波によるチリ国における港湾・海岸の被害に関する現地調査を報告するものである。  調査の主要な目的は、①被害の実態を明らかにして将来の被害予測技術の向上に資すること、②チリと日本の津波減災技術の交流を推進することである。調査には、独立行政法人港湾空港技術研究所、財団法人沿岸技術研究センターおよび名古屋大学の9名が参加している。調査は基本的に2つのグループに分けて実施しており、ロビンソン・クルーソー島を含む、チリ中部における津波被害の概要調査と、コンセプシオンの近く、特にタルカワノ港周辺における詳細調査の二つからなる。  今回の地震はMw8.8と非常に大きく、チリ国沿岸部に多くの被害が出ているが、それらはこれまでの地震・津波災害からある程度想定できるものであった。ただし、今回の調査で将来の防災力の向上にとっても重要な、特徴的な災害がいくつか認められた。例えば、  1)津波災害として日本でも危惧されているコンテナ災害が現実に発生している、タルカワノ港において、約680個のコンテナが漂流し、一部は家屋などに衝突して二次災害を発生させた。  2)チリ本土から離れたロビンソン・クルーソー島では浸水高が15mにも達し、死者もでている。特に海岸の地形によって波の大きな集中が起きることが確認され、また離島での情報伝達の課題が明らかとなった。  3)沿岸域の住民は、1960年のチリ地震津波の記憶から地震直後に避難しており、大きな津波の割には死者が少なかった。死者は警報の解除が早かったために早く戻った住民や、避難しなかった観光客などである。  ただし、今回の調査では、大規模な地震による災害と津波による複合災害の調査も主要な目的の一つであったが、明確な事例は認められなかった。なお、チリ国では日本と同様に巨大津波の発生国であるが残念ながら津波防災技術は十分とは言えない。日本への期待が大きく、大学等と今後の技術協力の進め方を議論した。
全文 /PDF/no1224.pdf