研究について

研究成果

長周期うねりの護岸越波量および作用波圧特性に関する実験的検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1218 2010年09月
執筆者 加島寛章、平山克也
所属 海洋・水工部 波浪研究室
要旨  2008年2月に発生した伏木富山港の防波堤滑動や護岸越波のように、近年各地で起きている港湾・海岸災害は、周期14s以上のうねり性波浪(本研究では、“長周期うねり”と呼ぶ)の来襲によるものが多い。この波浪は、風波に比べてより沖合から屈折や浅水変形が生じ、沿岸域では、より大きな波高となって護岸等に作用する。一方、長周期うねりは非常に狭帯域なスペクトルを有するため、波高分布や波群特性が通常の風波と異なり、護岸上の越波量や作用波圧に違いが生じることが懸念される。そこで本研究では、断面実験により長周期うねりの護岸越波・波圧特性を明らかにするとともに、護岸越波量を効率的に低減することが可能な対策工断面の提案を試みた。  これらの実験の結果、以下のような主要な結論が得られた。 1)長周期うねりの直立護岸に対する越波量は、通常の設計波よりも周期が長いことに十分配慮すれば、既存の越波流量算定図を用いて算定することが概ね可能であることが確認された。ただし、長周期うねりに顕著な波群の影響を受けて越波量が増加する危険性があることに注意が必要である。 2)長周期うねりの直立護岸に作用する最大波圧強度は、静水面より上方において大きくなる傾向にあり、その最大値は通常の風波に比べ、砕波帯内において2~4倍程度大きいことがわかった。 3)護岸天端高を相対的に嵩上げする効果を発揮する消波ブロック被覆工の代わりに、これとほぼ同等の断面積を有する離岸堤を直立護岸の前面に設置することにより、長周期うねりの護岸越波量を直立護岸に比べて概ね10%以下まで低減させる効果が期待できることが確認された。ただし、この断面は直立護岸を直接防護する機能を有していないため、静水面より上方において発生する局所的な波圧に対して低減効果が十分発揮されない場合がある。
全文 /PDF/no1218.pdf