研究について

研究成果

波形インバージョンにより推定された最近のわが国における内陸地殻内地震の震源過程

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 049-03-05 2010年09月
執筆者 野津厚
所属 地盤・構造部 地震動研究チーム
要旨 本研究では、最近わが国で発生した規模の大きい内陸地殻内地震を対象に、余震の記録を経験的グリーン関数を用いた波形インバージョンにより、震源断層の破壊過程の推定を行った。グリーン関数として、経験的グリーン関数を用いることのメリットとしては、地下構造モデルの不確実性が震源モデルに与える影響を回避できる点が挙げられる。数値計算によるグリーン関数を用いる研究では、地下構造として水平成層構造を仮定する場合が多いが、それに対して、経験的グリーン関数法では、2~3次元的な地下構造の影響も考慮することができる。大地震の断層面付近で発生した余震は伝播経路特性とサイト特性を大地震と共有していると考えられることが多いが、本震の断層面が一定の広がりを有している場合には、任意の余震が本震と伝播経路特性・サイト特性を共有しているとは一概に言えない。解析に適した余震を選定する手法として、本研究で示したフーリエ位相に着目する方法は効果的であると考えられる。解析の結果、対象としたいずれの地震においても、震源断層面上に特にすべりの大きい領域(アスペリティ)が存在することを確認することができた。また、アスペリティの破壊の進展方向に位置する地域において特に大きな被害が生じている傾向が認められる。1995年兵庫県南部地震の大被害をもたらした強震動はアスペリティの破壊の進展によってもたらされたことが入倉(1996)によって指摘されているが、同様のことが、その後わが国で発生した内陸地殻内地震に対しても明らかになった。
全文 /PDF/vol049-no03-05.pdf