研究について

研究成果

アマモ分布域の拡大とそれを支える種子散布

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 049-03-02 2010年09月
執筆者 細川真也、仲岡雅裕、三好英一、桑江朝比呂
所属 海洋・水工部 主任研究官
要旨  久里浜湾と三河湾においてアマモ場の分布域の変遷を調査した結果、久里浜湾では27年間で約300m程度、三河湾では1.5年で約500mの分布域拡大が見られた。アマモが水平方向に拡がるメカニズムの一つである地下茎を伸ばして水平方向に拡がる成長による拡大速度は、高々0.7m year-1程度であることから、これらのアマモ分布域拡大には、もう一つの拡大メカニズムである種子の拡がり(種子散布)が重要な役割を果たしていたことが強く示唆された。  アマモの種子散布には、種子が親株の組織とともに水面を浮遊して遠くまで運ばれるメカニズムとその場に落下して底質輸送として運ばれるメカニズムが存在し、前者については、穂(種子を含むコンポーネント)、穂の集合体(穂が束となったもの)、生殖株(穂やその集合体を含む一つの株)とともに輸送されると考えられてきたが、実際には未解明の現象である。そこで久里浜湾において、生育するアマモの生殖株における穂とその集合体の痕跡と汀線に打ちあがっている種子の状態について調査した。さらに、それらコンポーネントの浮き沈み試験を行った。その結果、種子は穂とともに輸送され、未成熟段階においては浮き、成熟段階においては沈むことが明らかとなった。この浮き沈みには、種子量が強く影響していることが示された。生産された種子量とパッチ内に残存する種子量を比較したところ、久里浜湾においては、生産された種子は1/2から1/3が発芽時期(翌年1月)までパッチ内に残存していることが明らかとなった。これより、アマモの種子は、主にその場に落下して輸送されている可能性が高いことが結論付けられた。
全文 /PDF/vol049-no03-02.pdf