研究について

研究成果

微小溶存酸素分布を比較対象とした摩擦速度推定手法の評価-底面境界層における乱流と溶存酸素の同時観測-

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 049-03-01 2010年09月
執筆者 井上徹教,Ronnie N. GLUD,Henrik STAHL,Andrew HUME
所属 海洋・水工部 主任研究官
要旨 スコットランド西部に位置するLoch Etiveにおける流動場観測の結果から、渦相関法、乱流運動エネルギー法、慣性散逸法により摩擦速度を推定した。また、摩擦速度を入力パラメーターとすると溶存物質の鉛直濃度分布が計算可能であることを利用し、同時に観測された溶存酸素濃度の微小分布の再現性を相互比較することにより各手法の評価・検討を行った。上記3手法から推定された摩擦速度を比較した結果、乱流運動エネルギー法による推定値は他の2手法よりも明らかに大きな値を示した。また、摩擦速度の増加は拡散境界層厚さの減少、その中での溶存酸素濃度の増加を引き起こすため、乱流運動エネルギー法による推定値は拡散境界層内の溶存酸素濃度を過大評価する結果となった。一方、渦相関法と慣性散逸法から推定された値では、有意な差がみられなかった。それぞれの手法から推定された溶存酸素濃度の値と観測値との誤差は、渦相関法では0.2%、乱流運動エネルギー法では9.8%、慣性散逸法では0.7%であった。以上より、本観測場所のように比較的静穏な海域においては渦相関法および慣性散逸法の利用が望ましく、乱流運動エネルギー法の利用は避けるべきであるとの結論に至った。
全文 /PDF/vol049-no03-01.pdf