研究について

研究成果

港湾開発プロジェクトの最適なライフサイクルマネジメントに向けた資金調達制度の国際比較

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1215 2010年06月
執筆者 古市正彦
所属 特別研究官 特別研究官
要旨  近年、船舶の大型化が急速に進んだ結果、大規模な港湾開発プロジェクトには膨大な資金調達が不可欠であるため、その財源は多様化し、国際的にはコンセッション等によって建設と維持管理を担う責任主体が異なるケースも数多く見られる。港湾開発プロジェクトにおいて、最適なライフサイクルマネジメントを実現するには、建設費とサービス供用期間中の維持管理費の総和を最小にすることが望ましいが、建設費と維持管理費の負担者が異なるケースでは、それぞれの費用負担者が自らの費用の最小化を目指してしまうため、全体最適とならない可能性が高い。  このため、港湾開発プロジェクトの資金調達制度の国際比較を行い、港湾開発主体がライフサイクルマネジメントの制度設計を行うときに不可欠な情報を提供することを目的とする。当該分野の既存研究としては、資金調達制度が比較的整っている欧州港湾協会(ESPO)が加盟国の資金調達制度について体系的に取りまとめたレポートが2004年に報告されている。また、米国では、米国連邦海事局(US MARAD)が、港湾管理者が担務していない航路・泊地、背後圏アクセス道路等については除かれているものの、港湾管理者の財務内容の透明化の観点からその収入(開発資金の場合は財源)について体系的な報告書をまとめている。  そこで、まず、制度が比較的整っておりその詳細が公表されている欧州の資金調達制度について既存文献に基づいて概要をとりまとめた。そのうえで、欧州、米国以外を含む世界90ヶ国の202に及ぶ港湾管理者を会員とする国際港湾協会(IAPH)との共同研究により、港湾開発プロジェクトの財源構成について世界の港湾管理者に対するアンケート調査を実施し、資金調達の実態把握を行った。その結果、欧州の制度に加えて、日本を含む16カ国、22の港湾管理者等から26プロジェクトについて得た有効なアンケート結果を基に、港湾開発プロジェクトの資金調達制度の実態について国際比較を行い、建設・維持管理の一体化に向けた制度設計上の課題整理を行った。
全文 /PDF/no1215.pdf